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「なんか元気なくね?」
「んー…、そんな事ないよ…、」
学校、来たくなかったけど大屋君に会いたかったから頑張って登校した。
でも大屋君の顔を見たらやっぱり来なきゃ良かったって、僕はすぐに後悔した。
だって、なんか胸のとこが痛くなる。
大屋君の顔見たら、昨日見た女の人とのちゅうがぱっと頭の中に映し出されて、一生懸命消そうとしても消えなくて、それはずーっと僕の頭の中に貼り付けられたままになってしまった。
「…いらない」
「何だよ、珍しいな」
にぼしを口元に持って来られて、緩く首を振る。
正直食欲なんて皆無に等しくて、昨日の夜も折角美味しいお店に連れてってもらったのに、僕はほとんど何も口にしないままお店を出てしまった。
今朝だって、心配するシマさんの視線を痛い程受けながら、結局何も食べられずに家を出て。
胸に何か大きな黒い塊のような物がつかえてる感覚がして、頑張っても何も食べられないような気さえした。
「すげぇ暗いけど、何かあったか」
「…何にもないよ」
「何でもありますって顔が言ってるけど」
「何でもないってば」
「昨日俺に射精させられた事、後悔してるとか?」
「…しゃせい?」
「おい、忘れんなよ」
「あー、うん、覚えてる。後悔とか別にしてないし」
「ならいいけど」
机にべたーっと張り付く。
前にいる大屋君はそんな俺の髪をツンツン引っ張ったり、ぼうっと宙を見詰める僕のほっぺをむにむにしたり、それでも無反応でいれば鼻をぎゅうっと強く摘まれて、流石に痛いと声を上げた。
「…痛いよ大屋君、」
机に張り付いたまま、赤くなっているだろう鼻を指でさする。
「今日はいいのかよ」
「何が?」
「何がって、ここんとこずっとお前が俺にしろしろ煩かった事だよ」
「………」
それは、ちゅうの事だろうか。
そう思って、僕の心がまたずんっと沈んでいくのを感じた。
女の人とちゅうした大屋君と、いつもみたいにちゅうをする気になれないのはどうしてだろう。
したくないっていう訳じゃないけど、でもする気になれない。
本当はしたいけど、でもなんか、いやなんだ。
「…しばらくしなくていい」
「なに、お前マジで変なもん食った?」
「何も食べてないよ…」
「今にも枯れそうな勢いでびびるんだけど…、」
隣にいるミッチーを見れば、何となく不安そうな心配そうな顔をしているのがわかる。
何かあったでしょ、って、その目が言ってるような気がした。
その問いかけるような視線からふいっと目を逸らすと、僕は再び宙に視線を彷徨わせる。
どうしていいのかよくわからない。
こんな気持ちは初めてで、どう対処していいのかわからない。
僕以外の人と、ちゅうして欲しくないって言ったら、大屋君は何て言うんだろう。
ムリ、って言われるんだろうな、って。
そう考えたら、また凄く、いっぱい、胸のとこがきゅうって痛くなるのがわかった。
それから、泣きそうにもなってくる。
大屋君が好きなのに、今は一緒にいたくない。
でも大屋君が好きだから、一緒にいたい。
矛盾だらけの僕の感情。
どうすれば整理が出来るのか、本当にわからない。
「斗真、また兄貴になんか言われたか」
「…ううん、別に、」
「嘘つけ、そんな辛気臭ぇ顔してねーで、言ってみろよ」
「………」
大屋君のその言葉に、僕は机に張り付けていた顔をゆっくりと持ち上げる。
それから目の前にいるその顔をじっと見詰めて、僕は口を開いた。
「もうね、大屋君と一緒にいちゃだめだって…、」
「ん。で、お前はどうすんの」
「………」
「何て返事したんだよ」
「………」
「斗真」
「…わかった、って、言ったよ…、」
ガタン、と、椅子が音を上げる。
反射的に立ち上がった大屋君を見上げれば、後頭部に手を当てながらめんどくさそうに僕を見下ろすその目と視線がぶつかった。
「そういう事なら、俺行くけど」
「…どこに?」
「どこでもいいだろ」
「……うん、」
俯いてそう頷けば、微かに舌が鳴るような音が聞こえた。
大屋君の気配が消えるまで僕はじっと俯いて、そしてその後すぐ傍らにミッチーを感じて、その瞬間、僕はその身に抱き着いていた。
「塚ちゃん…」
「…ミッチー…っ、僕ね、」
「いいよ、焦んなくて。落ち着いてからでいいから」
優しい声と、優しい手。
頭を撫でられて、僕は尚も強くミッチーに抱き着いた。
僕の事を好きじゃないって大屋君は言っていた。
ただ、セックスがしたいだけだって言っていた。
それは本当にその通りなんだって思って、そしてそう思って、もっと深い傷を受けたように痛む胸の真ん中が苦しくて、堪え切れずに溢れた涙が、ミッチーの制服にどんどん吸い込まれていった。
離れる方が辛いから、自分の心からは目を逸らして大屋君と一緒にいるつもりだった。
でもムリだったんだ。
すごくすごく好きだから、ムリだった。
だって、僕───
大屋君に、僕だけを見て欲しいって、思っちゃったから。
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