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傷物の君 五
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洗濯機の上にあったティッシュで唇の血を拭って止血をしてから、俺は腕を組んだ。
一旦湯船にお湯をためるか?
あ。
俺はレバーを動かして水温を上げて、カランからお湯を出した。
「喜津愛、これも怖いか?」
喜津愛の手をとって、カランから出ているお湯を触らせてみた。
「ううん、怖くない」
安心して、ついため息がこぼれた。
俺はカランを使って桶にお湯をためて、 喜津愛の身体にかけた。石鹸とタオルで身体を洗ってやって、桶にお湯をためて、身体についた石鹸を流した。
「はあ……」
風呂を出た頃には、家についた時間から一時間も時が進んでいた。
風呂だけでこんなに大変になるとは思わなかった。
服はどうしよう。
とりあえず俺のT シャツの中で一番小さいのを着せたら、まるで、女の子が彼シャツを着ているような雰囲気になってしまった。いや、T シャツで足が隠れて見えなくなるだけだけならまだしも、裾が床についているからそれよりもサイズが合っていないか。
ウエストがだいぶ細く見えたから測ってみたら五十センチメートルだった。
十歳の男の子の平均って幾つだっけ? 調べてみたら五十九センチメートルだった。十センチメートルも違うじゃねぇか!
とりあえず俺の下着で一番小さいのを履かせた。サイズが合っていないが仕方がない。近場の服屋の営業時間はとっくに過ぎているから、朝になったら服を買いに行こう。
「喜津愛、どこも痛いとこはないか?」
「うん、ないよ!」
本当か?
相当怖い思いをしてきたから、痛いと思っていても口に出さない子になってしまっているのではないかと思った。でもそもそも、何が嘘で何が本当かどうかも判断する術がないんだよな。
「はあ」
よくない経験をしてきた子だとは見かけた時から思っていたが、正直ここまでひどい経験をしていたとは思わなかった。
俺は自分じゃない誰かに拾われて、嫌な思いをする可能性があるなら、そうなる前に拾ってやろうと思っただけだ。まるで漫画のようなひどい経験をしてしまった喜津愛の人生を変えてやろうと思ったわけでも、俺の人生をかけて喜津愛を育ててやろうと思ったわけでもない。そんなやつに、こんな子が育てられるのか?
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