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失敗
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今日は快晴、とは言いづらい晴れていると言えば晴れていて、雨が降りそうと言われれば降りそうという曖昧な天気
それは志崎の心を表しているかのような天気だった。
遡って数時間前
「おい、志崎」
とても聞き覚えのある愛しい人の声。でもその声も今では恐ろしく感じ、声が聞こえる方向に身体が動かない。
目線を合わせない、ましてや返事すらしないのは流石にまずいと思い返事だけでもと力を振り絞って返事をする。
「は、い…江本さん…」
「…なぜこちらを向かない…」
何故と言われてもこの先の未来が自分には透けて見えるからである。絶対に怒られると確信しながらも自分の犯した過ちを反省する。
反省するなら問題を起こすなとは思うがどうにも真面目に取り組むと失敗しかしない。
その失敗する度に俺の上司、江本淳也さんに助けていただいている。
「おい、聞いてんのか」
まずい…考えすぎていて返事を忘れていた…
「い、いえ!えっとすみません…」
「はぁ…さっきの件はこっちで片付けておいたから。その引き継ぎは吉田に任せる、お前は今月締切の書類でもしておけ。いいな?」
そうか、片付いたのか、よかった…
内容は思い出したくもないがまぁ簡潔に言うと俺がした注文にミスがあり発覚したときにはもう既に発送の準備が進められている状態だった。
それであたふたしている姿を江本さんに見つかり、今に至るという訳である。
その時の江本さんの表情は…想像すると気分が悪くなるのでこれ以上はやめておこう。
ほんと何度もすみません、江本さん…そしてありがとう吉田さん…
「本当にすみません…書類、出来次第江本さんのPCに送信します…明日までには…ほんとすみません」
怒っているだろうか…江本さん、感情が声に出ないからよく分からない。
顔すら見る勇気がなく傍から見れば蛇に食べられる蛙のようになっているのではないだろうか。
「…明日までに完成させると今日の帰りが遅くなるだろう。今日は定時で上がれ絶対だ」
「え?」
考えるよりも先に口が動いてしまった。これは優しさ…なのか??
いつも定時すぎの退勤で何も言わなかった江本さんが?
よく分からず困惑していると「返事は」と不機嫌そうに言われたため反射的に「はい!」と答えてしまった。
その時の江本さんの声が少し悲しそうだったのは気のせいだと思う。
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