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0.prologue
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俺たちの関係を一言で表すのならば『セフレ』である。
奴は俺の元にふらっと酒を持って現れる。その酒を二人で飲んで、抱き合って終わり。
朝になれば奴は忽然と姿を消している。まるで、初めからいなかったかのように。
それを別に寂しいなんて思ったことはない。俺もあいつも、本気にはならない。いわば、共に『都合のいい存在』でしかないからだ。
欲求不満。性欲処理。
奴が俺を抱く理由はいくつか考えられるけれど、結局は『都合のいい存在』なのだろうな。
そもそも、俺は奴の本名さえ、知らないのだから。
この日も、奴は俺のアルバイト先に現れた。その手には酒。
「適当に花を一本くれ」
そう言って、奴に桃色のバラを差し出す。これが、二人の合図。
奴の言う「適当に花を一本」は『お前の家で待っててもいいか』という意味合い。俺が桃色のバラを差し出すのは『わかった』という了承の意味。ちなみに、ダメだったときは白色のバラを差し出すことになっている。
「じゃあな」
奴は桃色のバラを持って立ち去っていく。その後ろ姿を見つめつつ、俺は思う。
――恐ろしいほどに、歩き方がきれいな男だと。
(ルーの奴は、なにを考えているんだろうな)
あの男は俺に本名を教えてくれない。その代わりとばかりに、『ルー』と呼べと命じてきた。
だから、俺はあいつを『ルー』と呼ぶ。
(今日は、楽しい日になりそうだ)
そう思って、俺は仕事に戻るのだった。
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