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仲直り
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蛍「優くん、入っていい?」
優「駄目」
蛍「え、」
初めて断られた。部屋には入れて貰えると思っていたのに、もう顔も見たくないほど嫌われてしまったんだろうか。どうしようと扉の前でノックした手を下ろしもできずにいた。すると中からバタバタと音が近づいてきてドアノブが回った。
優「うそうそ、嘘だから!俺が虐めてるみたいじゃん」
部屋から顔を出した優は少し焦った顔をして引き止めるように蛍の腕を引いた。驚いて目を丸くしたが蛍は逆らわず部屋に足を踏み入れる。
優「普通に入っていいから、何?どうしたの」
手は話されないまま、でもやっぱりいつもより何処かぎこちない。
蛍「謝ろうと思って」
優「何を?」
ただでさえ怒られたことも怒ったことも無いからすぐにでも自分の部屋に戻ってしまいたくなったが、今ここでそれをしてしまったらもっと距離が出来てしまう気がして、蛍はまだ腕にある優の手を空いてる自分の手を重ねて口を開いた。
蛍「色々考えたんだけどね、俺が試験の前の日に同じ学校に行くんだって言ったから、優くんもびっくりして試験手につかなかったんじゃないかって。ホントは空兄ちゃんにもねちょっと手伝ってもらって考えたんだけど、これ以外思い当たらなくて、優くん点数良かったし違うかなって思ったんだけど学校行けてもこのままは嫌だから、だからごめんなさい……違ったら教えて欲しい、もうしないから、あのだからね」
優「ちょ、長い長い、わかった、わかったから!的はずれな事謝ってるのは置いといて、そもそも怒ってないし」
的はずれと言われ喋りながら段々落ち込んでいた気持ちが更に落ちてく感覚がしたが、怒ってはないと言われそれも無くなる。
優「もー、でも俺もごめんね。虫の居所は悪かったけどそっけなかった自覚はあるし」
手を離されたかと思えば、背に手を回され抱きしめられる。そんな間は空いてなかったはずなのに随分久しぶりな気がした。
優「榎本来るって聞いた時は本気で嬉しかったし、蛍なら確実に受かるし、でも俺い言ったじゃん?」
自分も優の背に腕を回していると腕に収められたまま瞳をのぞき込まれた。額のくっつく距離だ、気にしないが。
蛍「……あ、考え直さない?って言ったやつ?」
優「そう、なんと言うか……まぁ、あまり治安が宜しくないし狼だらけだし」
うんうん唸りながらまくし立てる優。普段は割とよく喋る。
蛍「私立の学校って狼も飼ってるの?すごいね、でも通ってるのみんな大っきい家の人なんでしょ?そんな素行悪い人なんているのかなぁ」
優「素行っていうかまぁ、そこはもう大丈夫!俺と空でどうにかするって割り切ったし!……ところで蛍、」
蛍「ん?」
優「狼、見たいの?」
蛍「飼ってるならさ、俺アレやってみたい、飼育係!」
優「そっか、てかホラどうせまた片付け終わってないんでしょ?俺もすぐ行くから先行ってな」
蛍「そうだった、ありがと優くん!」
蛍は優をもう一度ぎゅっと強く抱き締めて急いで部屋から飛び出した。まだ何かしら問題があるらしいけど、優くんが大丈夫と言うなら大丈夫なんだろう。それより今はまた元に戻れたのが嬉しくて、スキップでも踏んでしまいそうなくらい分かりやすく蛍は浮かれていた。
蛍がパタパタと部屋から出て言ったあと、優はため息をついてキャスター付きの椅子に腰掛ける。勢いをつけて座った椅子からはギィと軋む音がした。
優「久々にやっちゃったなぁ」
ほとんど息を吐くだけの声量、蛍には聞こえてないだろう。
優「でも俺もまだ蛍とひとつ屋根の下続行したいし、空も居るし、意地でどうにかするわ、やってやる」
言ってること完全に欲丸出しだがその目は完全に据わっている。膝を叩いて気持ちを切り替え、蛍の早へ向かおうとするが「あ、」と呟き机に伏せられたスマホに手を伸ばす。メッセージアプリを開きトーク画面、上に固定してあるのは空と蛍。空の方を選ぶと文字を打ち始めた。
優『学校で狼って飼える?飼育係あるかって蛍が目キラキラさせてんだけど』
空『仲直りできたんだ、良かったね。狼かぁ、人馴れした個体かハスキー犬とかで納得してくれるかな。まあ、1日あるしどうにかするよ』
買い出しに出ているはずがレスまで数秒、家族以外の全ての通知を切っている男の行動である。良くやるな、と思いつつ特に返事は返さずスマホはポケットへ、今度こそ蛍の部屋へ向かった。
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