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序
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勤めていた広告代理店が潰《つぶ》れて、転職をしようにもやる気がなく、たまたま目についた清掃のアルバイトを始めて早1ヶ月。
月城夕は自分の将来を憂いながらも、ただ淡々と日々を清掃の仕事をこなしながら生きていた。
今週は博物館の清掃だったか……。
週毎に割り当てられた清掃場所のスケジュールをチェックしていると、テーブルの上に置いていたスマートフォンが鳴り始めた。手に取ると、清掃会社で夕を面接した若木からだった。
夕が休む時や急遽《きゅうきょ》清掃場所の変更などがあった時のみやり取りしている。
恐らく変更の連絡だろうと当たりをつけて出ると、若木は開口一番にこう告げた。
「月城、今日からしばらく、今から言う会社を担当してくれ。場所は……」
説明を聞くところによると、今月の初めに設立したばかりの婚活を支援する会社(結婚相談所とはどこがどう違うと説明されたが、夕にはよく分からなかった。)で、人手が足りないので、一時的に清掃スタッフを雇いたいとのことだ。
期限ははっきり決まっておらず、小さい会社だから一人で十分だという話を先方がしてきたらしい。
「何か質問はあるか?」
「……いえ」
特に思いつかずに短く返すと、ふっと若木が笑う気配がした。
「……?」
「いや。2、3日前に入って来た新人がいてな。何かと愚痴ばかりを言うから、月城を見習ってほしいなと」
「……」
もっと喋ろと昔から言われてきた身としては、どう返すべきか分からない。
「おっと、もうこんな時間か。悪いが、今すぐ向かってくれ。それじゃ」
言うだけ言うとあっという間に切られた。
スマートフォンを少しだけ眺めた後、出勤するべく準備を始めた。
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