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告げれない恋 3
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お昼休みが終わり、午後の空腹に満たされたお腹。それと同時に昼の心地いい日差しは生徒たちの眠気を誘う。
科目によっては、生徒の昼寝が増えてしまう時間帯。それは結翔も同じである。こくこくと船を泳がせている。
今日は昨日よりも比較的に温かな日だ。
余計に、生徒たちの午後の眠気を誘ってくる。数人の生徒はもう、夢の中へと落ちている。その中にはもちろん池波はきっちりと入っている。
それでも、眠気を吹き飛ばしながら結翔は授業にへと意識を持っていく。そうでもしなければ今にでも眠ってしまいそうだからだ。
(あぁ〜早く終われ。早く終わってほしい……)
心の中では愚痴を零しながら、黒板とにらめっこしノートに書き写していく。科目の教師は少し字が見ずらい。そのために、目を凝らさないと、分からない。他の生徒たちも結翔と同じだ。
時々、こちらを向いては、教師が問題を解くように誰かを当てていく。結翔はたた、密かに自分の気配、存在を薄める。これは幼なじみと共に居た時に身についた自分だけの特技。
(あいつと居た時は、いつもこうだったからな)
少し懐かしくも悲しい記憶が脳裏をよぎる。
それを忘れるために、気合いを入れ直して、黒板へと視線を向ける。思い出してしまった記憶をほかのことで塗り替えていく。
(なんで、思い出しちゃったんだろ)
結翔はノートに課題を写しながらも、そんなことを考えた。
*
「結翔くん!」
「下駄箱の方で待ってるから、早く来いよ?」
「みらんちゃんを迎えに行ったらすぐ行くよ!!」
「あんまり走るなよ〜」
結翔は池波に大声でいいながら、教室を出て、ゆっくりと階段をおりていく。階段にある窓からは昼までの暖かな陽気はなく、静かで、夜を知らせる茜色の綺麗な空模様へと変わっている。前のときだったら、目にすることの少なかった光景。前なら、学校が終われば、寮に帰って、勉強に勤しんでいた。こっちらに来てからはあの息苦しかったこともない。
友達でも馬鹿みたいなことをして、楽しむ。あの頃の自分が密かに思い描いていた『青春像』今、そのものだ。
(ほんとうに、楽しいな……)
あの時には少しも思わなかった、「青春」。彼がそばに居てくれればいい、それを強く願っていたが、今は違う。彼の本心を知ってから、抱いていたものを塞ぎ込んだ。迷惑に思っていたなんてその時には気づきていなかった。
『幼い頃からいるし、親の関係を崩したくないから強くは言えないんだけど、毎日後ろを着いてこられてて正直ウザイんだよな』とほかの友達と笑いながら話していた。結翔はそれ以降、あまり彼とは近づかなくなった。そして、高校は妹が通っている場所へと移った。しかし、その判断は正しかった。
「結翔くーんお待たせー!!」
「お兄ちゃん、ごめんね!結構待ったでしょう?」
みらんの言葉に結翔は「そんなに待ってないよ。池波遅い」と文句を言う。みらんの頭を撫でながら。
「うっ、うぅぅぅ……ごめんなさい。ほかの女子に捕まってて〜」
あわて、申し訳なさそうに謝られる。
しかし、結翔も池波が女子から人気なのは知っているために仕方の無いことだ。
「暗くなる前に行くよ〜」
「はーい!」
「池波の奢りな?」
「はい。奢らせて頂きます!お義兄様っ♡」
キモイからやめろ!
池波の言葉に結翔は不快だと顔全体で表しながらしっしっと池波を遠ざける。みらんはその光景を楽しく見つめる。結翔の自然な笑顔などこの学校に来てから見ているから。中学三年間の中では見られなかったからだ。
今は本当に心から楽しめているのだと思えるとみらんも自然と口角が上がる。
三人は仲良く、歩きながら、学校近くにある大通りへと向かっていく。
「俺は、コーヒーといちごのパンケーキ!!」
「みらん決まった?」
「ううん。お兄ちゃんこそ決まった?」
「まだだね」
兄妹同じ表情をしながら、メニューとにらめっこしている。池波はそんな光景を微笑ましく見つめている。店員さんも「悩んじゃうわよね〜」と頷いている。
悩んでいる時の表情や仕草は兄妹同じである。本当は双子では無いのか!? 池波は時折疑いたくなる。
「こういう時は……」
「ふたりが食べたいの半分こにしょうか?」
「そうだね。それじゃー…メープルたっぷりのパンケーキとマンゴーのパンケーキをお願いします」
「かしこまりました〜。それではしょうしょ〜うお待ちください!!!」
店員さんはそういうと急いで厨房へと向かっていく。
三人はそんな後ろ姿をじーっと見つめていた。
「なんか、愉快で楽しい店員さんだったね」
「そうだね。あの人のこと思い出しちゃったよ」
「誰ですか?」
「メイクアップアーティストをやっている父方の叔父さんのこと」
「スゴいっ! それじゃ、世界飛び回ってるの!?」
「そうだな。ほとんどの仕事は海外だって、去年ぐらいに言ってたっけ?」
「うん。日本で依頼がある時はよくうちに泊まって向かってるよね。私もたまにメイクとか教えて貰ってるよ。お兄ちゃんもだよね!」
「え、そうなん!!?」
「そんな驚くなよ!? ほら、俺昔から両親に……少し遊ばれててな。それで気づけば、趣味で…女装をな」
「ああーなるほど」
「理解早い〜ルイちゃん」
「ありがとー、みぃちゃん!!♡」
「うん。僕の盛大な秘密暴露の後でイチャっくんやめぇ!」
ギャーギャーっとお店に迷惑にならない声で話しながら、料理を待つ。
「それにしてもふたりっていつも迷ったら、あれなの?」
「そうだね」
「お互いが好きなものを頼んで、シェアしながら、食べる。子供の頃からそうだったから、癖かな?」
「そうだね。まぁ、お菓子とか食べ物の好みは似てるから、あんまし迷わないけどね!」
「素敵だなぁ〜」
みらんが笑いながら言う。幼い頃から、だいの仲がいい妹とお菓子などをシャアしていた結翔はいつも間にか兄妹かんでの食の好みは自然と似ていった。子供の頃からの癖と言うのか、よく分からないが、そのために外食とかになってもすぐに決まるためにそこはいいのかもしれない。
互いにそれで不快? に思ったことなどは無いからだ。まぁー……他人から見れば驚かれることはしばしばであるが。
池波のような反応は珍しい方である。
その後は、料理もき、みんなでワイワイと学校の愚痴をこぼしあいながら、フォークなどを進めていく。
落ち着いた雰囲気の店内に包まれているために、リラックスしやすい。結翔はみらんと池波の仲睦まじい光景を眺めながら、ふわふわのマンゴーパンケーキを口いっぱいに頬張る。ん〜っと自然と口角がゆるむ。次は一人で来るのもいいかもしれないと、密かに思っている。
すると、みらんが話しかけてきた。
「お兄ちゃん、一口ちょうだい!」
「はいはい、ほらよ」
あーんっと言いながら慣れた手つきでミランの口元まで運んでいく。その間に池波の嫉妬と独占にまみれた視線が注がれる。怖いという思いしかなかった。
その後何故か上書き? するかのように池波はみらんに「こっちも美味しいよ?」っと言って食べさせていた。結翔に向けられる怖い視線に静かに耐えるしかなかった。
「美味しかったね!」
キラキラとした目でみらんが言う。
つかさず池波が「そうだね!」っと爽やかな笑顔と共に返事をした。
結翔はただ、無言のまま歩いている。
そして三人は王通へと出る。すっかり当たりは薄暗くなっていた。
「それじゃ、池波明日な〜」
「おう! みぃちゃんおやすみ〜♡」
「ルイくんもおやすみ。ご馳走様でした!」
「あ。ご馳走様でした」
「結翔くーん完全に忘れてたでしよう?」
笑いながら、池波は駅の方へと向かっていく。結翔とみらんは反対側へと踵を返して、家へと向かう。元々学校から徒歩五分もかからない場所だ。大通なら十五分から二十分程度である。遅くなることは予めメールしているために、親も心配はしていない。
また朝と同じように兄妹仲良く? 帰るだけだ。
「なんか小学校の時みたいだよね?」
「そうだな。いつも二人で花探しては帰ってたね」
「うわぁー、懐かしいー!!」
(涼しいなぁ〜……)
そんな懐かしい幼少の話をしながら、帰っていく。
夜の涼しい風が頬をかすめた。
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