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とある朝の話。
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僕は
別に
君に
好きとか
愛してるとか
言って欲しい訳じゃなくて
君の親友というポジションを
手放すのがどうも惜しくて。
もし
思いを伝えてしまったらきっと
「...」
毎朝待ち合わせをする場所にはもうすでに彼はいて。スマホに視線を落として少し笑顔を浮かべてる。
───── かわいい。
告白する人たちってすごいよな。
でも一歩を踏み出さなきゃ
なにも変わらないんだよな。
変わりたいけど
変わりたくない。
スマホから、周囲を見渡すように視線を向ける彼と。ぱちと目が合う。
その瞬間。
僕の悶々とした気持ちが一気に振り飛ばされるような。光が放たれたような。風が駆け抜けていくような.....
でも少しだけ。
なんだかいつも違うような。
なんか今日あるんだっけ─────
うん、でも今日もかわいい。
「お、おはよう!」
「待たせたごめん、おは、よう」
明るくて。
かわいい笑顔で。
愛おしい人。
きっとこの思いは
死ぬまで─────
そっとこれからも見守っていこうと。
心の奥に今日も思いを閉じ込める。
もはや。閉じ込めて。
鍵をかけて。暗証番号も忘れてしまいたい。
あー苦しい、
でも僕よりもっともっと素敵な誰かとこれからも出会うんだろうな。彼の未来を考えると安易に思いを伝えることも出来ない。いや、傷ついたくないからあれやこれやと言い訳を述べているのも。
うん、分かっている。
「───── さ、だからっ」
あ、考え事していて。
なにも聞いてなかった。
ゆっくりと視線を向ける。
僕より身長の低い彼は。
少しだけこちらを見上げている。
なんでそんなに。
頬を赤くしているんだろう?
「お、れ!お前のこと好きかもしれない!の!」
???
.....ん?なんてなんて?
「今日こそは言うぞって決めてここ来た。お、まえ、ずるいん、だよ、...好き好きって態度に出す癖に。なんで、踏み込んでこないんだよ」
きっと睨むように。
でも顔が赤らんでいて。
ぼ、くの思いもしかして。
バレてたのかな─────
ぼんやりと考えてしまう。
あれ頭がうまく働かない。
「毎日毎日、見つめられてたら。こっちもその気になって...くる.....」
話し続ける彼を。
驚いた目で見つめてしまって。
「俺も好きかもって言いたいのに、一切なにも言わないのなんなの!俺のが片思いしてんじゃん!弱虫!臆病者!根性なし!」
なんか僕。
貶されてる
「大体さ、本当ずるいよね。この前だって。電車で俺に寄りかかって寝てきて。重って思ってたら。いつの間にか手繋がれてさ!ええ!!なにこれって焦るじゃん。降りる駅つきそうになってお前なんて言ったと思う?あごめんね、だぞ。あごめんね。じゃねえんだよ!平然とした顔で降りやがって!くそ、なんなんだお前!」
そんなことあったっけ?
「あ、あと!俺の好きなお菓子いつも買ってきてくれるのなに餌付け!?絆創膏なんでそんな可愛いの持ってるの!?昨日女の子と楽しそうに話してたのなに!?!?」
.......。
まだ話し足りないと。
怒り気味に話し続ける彼に。
一歩近づいて、そっと腰あたりに手を回してみる。
あ、と小さな声が聞こえて。
ふんわりと柔らかい香りに包まれる。
あー大好きな香り。
こんな近くに彼がいる。
本当に癒されるなあ。
「.....泉くん」
「な、んだよ、突然、
みんな見てるって、離せよ───── 」
「大好きって言っても、いいの?」
「っっ」
「墓まで持っていこうと思ってたのに、許してくれるの。僕、泉くん、に.....っ、お、もいを伝えても、気持ち悪くならない、の?」
あ
だめだ。
「───── うん」
優しく笑う彼も、僕の背中をさするように手をまわしてくれる。優しい。
さっきよりも
もっともっと
泉くんを感じて。
すごくすごくすごく。
あたたかい気持ちに。
余計に涙腺がゆるむ。
「じあわぜ」
「お、ま、俺の服で涙拭くなよ、おい」
「な、んで、なんで突然、え、夢?夢じゃないよね?」
「お前がいつまで経っても言わないから」
「だって、だって、泉くんは女の子が、」
「.....お前だっていつも楽しそうに女子と話してんじゃん」
「もう一生話さない、約束する」
「そ、そこまでしなくてもいいから」
「泉くん、ぼ、くね、僕ね」
「うん」
彼からそっと体を離して。
優しく笑ってみせる彼と向かい合う。
..........泉くん、強いな。
かっこいいよ、本当に。
僕自分のことしか考えてなかった。
傷つきたくなかった。
でも、泉くんは。
勇気を持って、僕に、
一歩踏み込んでくれたんだな─────
そう思うと。
「ぼ、く、泉くんのこと、す、きです」
「うん」
「泉くん、が一生懸命伝えてくれて、本当に、僕、嬉しい。いままで見てるだけで、幸せだったけど、泉くんが頑張ってくれたからこうして。大好きって伝えられてるんだね」
「...ん」
「大好きだよ、泉くん。ありがとう」
「ん」
嬉しそうに
微笑む泉くん。
「.......今日から僕たち恋人?」
「う、うん」
「今日記念日?」
「お、おう」
「嬉しい、毎日、ありがとうって伝えるね」
「お前、ずるい、やめろ、微笑むな」
「泉くん?」
「お前かっこよすぎんだよ。ずるい!」
「.....僕も泉くんのこと、かっこ....ん〜」
「おいいいいい、そこは言えよ」
「僕は、泉くんのこと可愛いって思ってるよ」
「かっこいいがいい!!!」
僕と泉くんが。
恋人になった日。
傷つきたくない弱虫に
好きな人が勇気を出してくれた日の話。
ありがとうね。
僕も強くなりたい、
「なんで、さっきスマホみて、にこにこしてたの?」
「ん?これ」
「これって、もふもふした羊のキャラクター?」
「うん、お前に似てんな〜と思って。このクッション買おうか悩んでた」
「....僕、ひつじ.....」
「あ、いい意味で、いい意味で!」
🐏???
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