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眠りから覚めるとウィルは帰っていた。おにぎりを食べながら、スマホを弄っている。
「ん、起きた。おはよー」
「いまなんじ」
「クソオヤジ」
···あ、ギャグか。一瞬、何を言ってるかわからなかった。
「……つまらん。そーゆーの、いいから」
「え、笑ってよ!愛想笑いでいいからさぁー」
「あ、は、は」
「うわぁ……フェンリル、サイテー。なぁ、今日は仕事ねぇーの?」
ウィルはおにぎりを食べ終わった後、ソファーの前に座った。
「ないねー。君がいるから」
「ふーん」
「なに、俺がいない間に逃げようと考えてる?」「いや?逃げようか迷ったけど、気になってさ」
「気になるって、何を?」
「フェンリルを殺せる存在のこと」
「ヴィーザル?」
「そう。ヴィーザルの肉を喰ったら死ぬって話、それって本当なの?」
体を起こしソファーに座る。
「本当かはわからない。頭の中にある何かが言うんだ、『ヴィーザル、その男の肉を喰うと死ぬ』って。実際、会ったことないし、喰ったこともなから、死ぬのかどうか定かじゃない。死ぬなら喰ってみたいけど、その男がどこにいるかもわからない。そーいえば、ウィルにヴィーザルって友達がいるって言ったよね?」
「そうだけど。でも、ヴィーザルって名前が一緒なだけで、そいつの肉を喰って死なない可能性だってあるだろ?」
「確かに。でも『ヴィーザル』って名前は多くいるわけじゃないじゃん?もしかしたら何か知ってるかもしれない。会ってみたいんだ」
俺を殺せる唯一の存在はどんな男だろう。そして最後の晩餐となる男の肉はどんな味だろう。
「フフッ」
「……フェンリル、よだれ出てる。牙も見えてるし。はい、ティッシュ」
鏡に映った獣の俺。一度見た姿だからか、ウィルは動じずティッシュ箱を渡してきた。
「ごめん、ごめん」
ティッシュでよだれを拭い、興奮を抑える。
「フェンリルって変だよなー。殺されるっていうのに興奮するなんて、マゾだよ。マゾ」
「何とでも言え。てかそーゆーお前も変だぞ、ウィル。何普通に受け入れてんの?人質として捕まってるのにくつろいでるし、人間を喰う俺を前にして怯えず、しかも昨日抱きついてきただろ。あり得ない、お前死にたいのか?」
「いや、死にたくはない。けど怖がる必要ないじゃん。だってフェンリル、可愛いし」
「···は?」
可愛い?……俺が?
ドクドクッ……ウィルの言葉に胸が波打ち、体が熱くなる。
「フフッ、真っ赤」
少しずつ顔が近づき、ウィルの吐息が顔に触れる。
「フェンリル……」
甘い声が脳内に響く。低くて色気のある声。
「ウィ、ウィル……?」
気づいた時には、唇が触れていた。
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