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好きになって、付き合う……
「考えたこともなかった」
醜い姿になりたくなくて、死ぬことばかり考えていた。ヴィーザルに会ったらその男の肉を喰って死ぬ。たとえ、その男がどんな奴だったとしても……
「フェンリルはないの?誰かを好きになったりしたこと」
「ないよ。だって人を喰う化け物だもん。食べ物としてしか見えない」
「でも俺と喋ってるじゃん。俺だって人間だよ?食べ物として見えてる?俺のこと」
「……見えないけど。でもそれは、興奮してないし、飢餓状態じゃないから見えてないだけ」
ふと自分の言葉に疑問を持った。
何で俺、ウィルのこと喰いたいって思わないんだろ。リークから人間をもらって食べてから、時間は経っている。そろそろ喰いたくなってもおかしくない。
でもそれどころか、ウィルのキスでお腹が満たされた感覚になってそれほどお腹が空いてない。
キスに何か意味があるのか?
「ウィル」
「ん?」
「もう一度、キスしてくれないか?」
真剣に頼むとウィルは笑った。
俺、変なこと言ったか?
火を止め肉を置いた後、俺の腰に腕を回してきた。
「……突き飛ばして逃げたから、嫌だったのかと思った。本当は良かった?もう一度したかった?」
「いや、確かめたいだけ」
「何を?」
「キスでお腹が満たされるか。それで満たされるなら、人間を喰わずにいられるかもしれない」
ウィルの顔が険しくなる。
「……だとしてもさ、人間の肉と豚肉しか喰えないことは変わらないだろ。あ、そーだ。ヴィーザルからまた連絡があって会えないって。予定があるんだって」
「え、嘘だろ!何で、急に⁉せっかく楽しみにしてたのにっ!つぎ、次いつ会える⁉」
「知らなーい」
「知らないなら聞いてくれよ!会わせてくれよ!」
こんなチャンス滅多にないのにッ!
「わかった、会わせてやる。ただし、条件がある。殺すのはクソ親父にしてくれ」
「それは俺が決めれることじゃないよ。あの若頭さんに言って」
「じゃあ、会わせない」
「えー!……じゃあいいや。自分で探す」
リークに言って調べてもらおう。キスでお腹を満たされることが証明されれば、化け物にならずに生きていける。
ウィルから離れようとするが、腰にまわった腕は俺を離してくれない。
「ねぇ、ウィル。離してくれない?」
「やだ」
腕の力が強くなり、ウィルの鼓動が聞こえてくる。
……速い。ドクドク言ってる。
「ウィル」
「……キスしてくれたら離す」
「何だそれ」
余裕そうな顔をしていた彼はどこへ行ったのだろう。瞳が潤み、頬や耳が真っ赤に染まる。
ウィルの顔を見てたら、俺の鼓動も速くなってきた。
「フェンリル……」
そんな優しい声で俺を呼ぶなよ。そんな愛おしそうな顔で俺を見るなよ。
ウィル、どーして俺は君とキスがしたいと思うんだろ……
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