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ウィルとキスしてから、人間の肉を喰いたいという衝動が起こらなくなった。むしろ満足している。
ウィルが寝たのを確認した後、リークと廃工場で会った。
「へぇー、じゃあその男とのキスで満足してるんだ?それは新たな発見だな」
「リーク、試しに俺とキスしてくれない?」「え、何で。ヤダよ」
「この間、ご飯くれなかったじゃん。腹ペコだったのに。その代わりに、ね?」
リークに近づき腕を回す。
「……喰わない?」
「喰うわけないでしょ。お腹空いてないんだし」
顔を近づけ、リークに口づけようとする。
その時だった。
「なにしてんの」
聞き覚えのある声だった。振り返ると帽子を被った男がいて、その男の表情はとても悲しそうだった。
「ウィル……何で」
「途中で起きたらフェンリルがいなくて探して来た。部屋にあったスマホを見つけてね。……ねぇ、なにしてんの。人質の俺を放って何イチャイチャしてんの」
「ちがっ……そーゆーのじゃ……」
「人を好きになったことないとか言ってたくせに。キスしたのは俺に流されただけ?」
「それはッ……」
何も言えなかった。流されただけ、そう言えばそうなのかもしれない。初めての感覚で、気持ち良くて、お腹も満たされたから受け入れた。
「そうなんだな……悪かった、気持ち悪いことして。人質らしく家で大人しくしてるよ」
「ウィル……ッ」
俺は去っていくウィルの背中を、見つめることしかできなかった。だってわからなかったから。
胸が痛む、この気持ちが何なのか……
時は過ぎ、ウィルと過ごす時間はあと残りわずかとなった。
リークとのことがあって、ウィルとのキスはなくなり、会話すらしなくなった。
「ウィル、明日お偉いさんの所行くから」
「…」
ウィルは微動だにせず、ただ景色を眺める。俺は必要以上の言葉をかけなかった。
明日から人間を喰える。この生活から開放される。待ちに待った食事というのに、ちっともお腹が空かない。
それに眠りも浅い。全然寝た気がしない。いつもだったら気にならないはずの時計の音が気になってしょうがない。
「このまま終わるのかな……」
せっかく打ち解けてきたのに、俺が台無しにした。
本当は嬉しかったんだ。ウィルは化け物となる自分を受け入れてくれて、人間として扱ってくれた。友達のように接してくれた。そして、死ぬことだけを考えていた俺に新たな選択肢をくれた。
「ウィルッ……」
頬に涙が伝う。涙を流すのなんていつぶりだろう。
明日、ウィルを喰うかもしれない。俺にはそれができるだろうか……
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