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1 宿敵
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砂漠の国、リナリアには魔物がいる。
一般人でも倒せる弱く小さい魔物ならば問題ないが、大型のものや、人を食らう魔物には要注意だ。
そして、その危険な魔物を退治するのが、俺たち魔術師の仕事になる。
俺は世界各国を旅して、各地の魔物退治をしてきたのもあるだろうが、天才魔術師と呼ばれていた。
寝ながら倒すこともあり、それも理由の一つかもしれない。
だが、そんな俺でも唯一倒せない魔物がいた。
「聞いたか?砂漠の中にオアシスと呼ばれる森林が生えている場所があるだろ?あそこに出たんだってよ」
「出たって、何が?」
「あれだよ、幻想獣」
「え!神の化身とも言われている、インテグラル・スカイか?」
「そうだよ、それだよ。全く、魔物だっていうのに神だとか、不可欠な存在と言われているなんて不思議なものだよな」
「まあ、そう言われるのも無理はないさ。何と言っても出会ったやつは一人残らず、あまりの美しさに骨抜きにされるんだとよ。俺はむしろ、死ぬまでに一度くらいは……」
「ちょっと話に混ぜてもらっていいか」
酒場にて、二人の若者がカウンターで語らっている間に割って入れば、揃って怪訝そうな顔をされた。
「いいけどよ。あんた、インテグラル・スカイに興味あるのか?」
「あるさ。大ありだ。何と言っても、この俺と対等に渡り合うのは奴くらいだからな」
「対等に?はっ、あんた寝言は寝て言えよ。あのインテグラル・スカイと渡り合える奴なんざ……」
「おい、待て。こいつのこの豪奢な赤いマント、見覚えがある。もしかしてこいつは……」
男が言い終える前に、俺は目深に被っていたフードを取り払い、素顔を晒した。
すると、それだけで二人のみならず、店内中の視線が集まり、水を売ったような静寂に包まれる。
「全く、指名手配犯並みの注目度だな」
やれやれと肩を竦めると、一泊置いて客の一人が声を上げる。
「天才魔術師、セリオドールじゃねえか。また魔物退治か?」
「おうよ。ただ、今回はただの魔物退治をしに来たわけじゃねえ。インテグラル・スカイに戦いを挑みに来たのさ」
今度は沈黙から一転、ざわめきが起こる。
「無理だ。負けるに違いない」
「いや、それは分からない。何しろ、噂ではセリオドールはインテグラル・スカイと互角に渡り合えるって……」
「そうさ。そこのおっさん、よく知っているな。俺は99戦中全て引き分けになったから、今こうして立っている。次の100戦目では必ず仕留めるつもりだ」
決して嘘を言っているわけじゃないが、店内中で馬鹿な、信じられない、と声が上がる。
俺はにやりと笑みを浮かべると、マントを翻しながら店の出入り口へ向かい、出る直前に言い放った。
「次に俺が戻って来たらそれは仕留めた証拠だ。楽しみにしておけ」
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