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3 まるで花嫁にされたような
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酒場を出て、噂のオアシスに向かいながら、俺はインテグラル・スカイのことを考えた。
「そういえば、俺の姿をまともに見ればお前は一歩も動けなくなるだろうなって言うけど、まだ一度も見たことないな。そもそもどういう意味なんだ?」
そう、俺は99戦もインテグラル・スカイと戦いながら、奴の姿を一度も目にしたことがなかった。
唯一分かるのは、現れる時はいつも七色の光が見えたり、何らかのまやかしが見えたりすること。
しかも決まって、まやかしは無駄に幻想的で、美しい。
「そんな出し惜しみするほどの……」
オアシスに足を踏み入れた瞬間だった。
森林で影ができているとはいえ、昼間の砂漠にしては冷たい風が吹き、そのあまりの強さに一瞬目を閉じる。
「今の風……はインテグラル・スカイ?」
呟き、目を開いた俺は、目の前の光景にはっと息を呑む。
目を閉じる前はただ緑の草木が生い茂っているだけだったが、今は一面の花畑が広がっていた。
まるで話に聞くあの世の景色のように、花々は色とりどりで一斉に咲き乱れ、否応なしに心が奪われる。
「いや、油断しては駄目だ。このどこかにインテグラル・スカイが必ず」
と、警戒を顕に周囲に目を光らせたが、一歩遅かった。
「……っ」
背後に何者かがいて、首元に鉤爪か何かを突き立てられている。それを確かに感じたが、すぐに振り向くことはできない。
「何度も幻想は見せてきたが、毎回驚いてくれてありがたいな」
「ふっ、その余裕はいつまで続くか」
横笛を構えようとしたが、背後から伸びてきた手が横笛を奪い取り、遠くへ放り投げる。
手?
あれ、人?
横笛を奪われたことよりも困惑が先立っていると、背後にいる何者かが俺の唇をなぞる。その触れ方があまりに優しいからか、なぜか腰がぞくりとした。
「っ……、な、にを」
背後を見上げた俺は、そこにいた男の姿に目を見張る。
美しい、なんて言葉では言い切れない。
人間離れした、まるで神様の化身のような完璧な顔立ちをした男。
ーー俺の姿をまともに見ればお前は一歩も動けなくなるだろうな。
不意に、インテグラル・スカイの言葉がしっかりと音声つきで蘇る。
まずい。あの声で今、俺の名を呼ばれたら。
俺のそんな思考を読み取ったかのようなタイミングで、インテグラル・スカイは口を開いた。
「セリオドール」
「う……あっ」
びくりと背中が反り返る。それほどまでに、インテグラル・スカイの声は甘く、刺激が強過ぎた。
そう、いえばこいつの声は最初から妙にいい声で。
「俺のものになれ、セリオドール」
「や、め……っ」
インテグラル・スカイの手が俺の体を滑り、衣類を脱がしにかかる。
逃げなくてはならないというのに、神に命じられた下僕のように抵抗一つできないまま、その花畑の絨毯の上に横たえられる。
「まっ……ぁっ、や」
「待たない。俺がいくら、この時を待ったと言うんだ」
「そ、なの知らなっ……ぅあ」
インテグラル・スカイの手が俺の下肢で勃ち上がり始めたそれを揉み込んでくる。底なしの快感に、目尻に涙が浮かぶ。
何で、こんな優しくするんだ。やめてくれ、溺れる。
そんな内心の悲鳴をまた読んだようなタイミングで、一層優しい手つきで俺の体を愛撫し、解れたのを確認しては分け入ってくる。
「あっああっ」
インテグラル・スカイの思うままにされながら、俺は心までは奪われまいと、伸し掛かる相手の顔から目を逸らす。
だが、目を閉じても、網膜にしっかりと刻み込まれ、逃れる術はなかった。
「どうした。得意の笛を吹いてみろ」
「い、われなく、ても……っぁう」
命じられたようなタイミングが癪に障るが、指笛を吹いてみせる。
「な、んで?」
ところが、いつもと精度は変わらないはずで、少しはインテグラル・スカイの動きが鈍るかと思ったが、全く効いている節がなかった。
「ま、さかお前っ……」
今まで互角にやり合っていたつもりだったが、それは全て演技で、魔法など一度も効いていなかったのか。
道理で神だとか言われるわけだ、と脱力した俺をインテグラル・スカイは容赦なく食らい尽くす。
花畑の中での交わりは、まるでインテグラル・スカイの花嫁にでもされたようだった。
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