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試合は終了してしまいました
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店に足を踏み入れて3歩。俺は店を出た。
想像はしていたが遥かに手強い。ゆるい店員がゆるく接客していれば俺もそこまで気にせずに滞在できる。
思ってた以上に人が多い。思ってた以上に年齢層が若い。いや当たり前なんだけどさ。
周りの雰囲気と、俺の場違い感が相まって地獄のようだ。
隣の佐藤くんはこんなにも馴染めているのに。同じ人間なのに何が違うのだろうと眺めるも、全てという答えしか出ない。
「先輩、大丈夫ですか?」
だがしかし、ここで無理だと言ったら、佐藤君がせっかく楽しみにしてたものを台無しにしたら、
それは男ではないのではないか。男気を見せなくてはいけない。
「大丈夫。よし、入るか」
勇者が如く、再び店に足を踏み入れた。
それにしても人類に問いたい。腰パンとは何だ。腰を殴ることではないんですかね。一時期流行った腰パンも、俺にとってはなんのこっちゃ理解ができない。わざわざ自分のパンツギリギリを攻めるなんて。物好きな人もいるものだ。
この世で生き残る術は、情報を得ておくこと。それなのに腰パンを調べて終わった俺の知識。今現在全く頼りにならないのに、好奇心に負けて腰パンの歴史を調べてしまった。見せようとして見せるパンツよりも、不意に見えたパンツの方がかなり夢がある。
いんす○ぐらむだって、一応は入れてある。デートのコーデも何となく事前に調べてはみたけど、俺に似合うはずがないと諦めてしまった。俺の試合は終了してしまった。
なんてふざけたことでも考えていないと、段々と息がしづらくなってくる。視線も人の声も、怖いのだ。これはただの被害妄想かもしれないが、笑い声が全て俺をバカにしたものに聞こえてしまうのだ。笑われる俺が悪いのだけれど。
怖さで気が狂ったのだろうか。
「佐藤、くん。駄目だ、ごめん。チェンジで」
気付けば、そう言いながら佐藤君の服の裾を掴んでいた。
男気なんかクソ喰らえ。年上だなんて関係ない。
何もかもが限界で、そんなプライドなんて関係なくて、とにかくここから逃げ出したくて、全てをかなぐり捨ててそう言っていた。
様子を見ようと顔を上げると、目を見開いている佐藤くんがいた。目でか。まつげ長。
ポカンと口も空いていて、漫画でしか見ないような大袈裟な反応。
それが俺の罪悪感を酷く立ち上げた。
「ご、ごめん。ごめんなさい。まじですいません。調子乗ったとかそういう訳ではないんですけど、はは、後で言っておきますね、えっと、腹切ります」
オタクにしかできない早口で、力の限り謝りまくる。こういう時の為に普段から練習してるんですよね。情けない。
「、、先輩」
聞き慣れた佐藤くんの声よりか、少し低くなっていて、怒らせてしまったのだと反省する。
「ご、ごめん。せっかく連れてきてくれたのに。
てか手、気持ちるかったな。悪い悪い」
ジワジワと涙が溜まってくる。吐き気に襲われる。
それでもここで逃げ出すまいと足を踏ん張っていた。
「気持ち悪いわけないじゃないですか。えー可愛い。」
俺の手を握り返すと、じっ、と見つめてくる。
「俺ばっかはしゃいじゃってすいません。
先輩と居られるのが嬉しくて。」
「な、に言ってんだ、からかいやがって」
可愛いってなんだよ。嬉しいってなんだよ。
そんな大層な人間じゃないのに。こんなにも頼りなくて情けなくてつまらない人間なのに、そんなに優しい目で見ないでくれ。
「その顔、ダメですよ。今外なんだから。
他の人に見られちゃうな、それぐらい可愛い。」
何なんだこの世界。もしかして俺って転生したのか。じゃないと俺にとって都合が良すぎる。仕事帰り疲れて頭が働かないまま歩いてたらトラックに跳ねられて転生したのか。よく考えれば悪役令嬢にピッタリの顔だ、あぁ悪役令嬢だって昔からあんなに悪い奴では無かったんだろうな、純粋で可愛い時代があったんだろうな。今の俺のように。
「さ、佐藤く
「あの、すいません。トイレ行ってもいいですか?好きな人との接触に慣れてなくて」
「へ、変態だ、」
俺が了承すると走ってトイレへと向かって行った。俺を近くのベンチに座らせて。
俺一人が店に取り残されたら死んでしまうのではないかと気遣ってくれたのだ。
さっきのインパクトがデカすぎてそれどころでない。佐藤くんってそういう人だったのか。
あんなに学校で王子様と謳われている彼は、俺との接触だけで元気になってしまう健全な男子高校生なのか?
そ、そんなに俺のことが好きなのか?
決して褒められる現象ではないけど、その分本当に俺をそう言う対象で見ているのかと、考えてしまう。
あぁけど本当に普通にトイレに用足しに行ってるだけだったら恥ずいな。
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