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新しい相棒は爬虫人?!
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「もう新しい相棒か」
野田(のだ)健斗(けんと)は警察官として働いてきた。だが、先日相棒であった竜ノ平(りゅうのひら)光司(こうじ)が殉職をしてしまった。強盗未遂を追いかけている時にナイフで刺された。刺したのは高校生で闇バイトに手を出してパニックになって殺した、と供述している。
「野田さんの新しい相棒って、光司さんの息子ですよね。認識あるんですか?」
「いいや、今回はじめて会う。二十一歳になるんだな。全くはえーよ」
正直、自分のことを親殺しと思われているのか、初対面でどんな反応をされるのか不安だった。
「失礼します」
シュー、と緊張でため込んだ息を吐く音が聞こえる。若いと思って想像した声よりもダミ声だった。
「はじめまして、竜ノ平 光司の息子、竜ノ平 月(つき)と言います。今日から野田さんのバディとなりました」
「なんで、爬虫人なんだ?」
まさか光司の息子が爬虫人だと思わなくて、逃げるようにして振り返る。近くに座っていた女性刑事の山田(やまだ)真希(まき)に話しかけると、山田は呆れたように小さくため息をついた。
「ほんと、野田さんは目の前の事件以外に興味がないですよね。竜ノ平さんの奥さん、爬虫人でしたよ。結婚式や葬式に行かなかったんですか?」
山田は目の前に積まれた書類を片付けながら水筒に口をつける。
「……結婚式の時は、行く途中で指名手配犯を見つけて追っかけて、葬式の時は光司を殺した銀行強盗の犯人を見つけて追いかけて……その……」
健斗の声がどんどん小さくなっていく。
「そのまま、未出席だったと」
山田の言葉に小さく頷いた。
「それならなおさら、月くんの面倒を見てあげないとですね。じゃないと、光司さん天国で浮かばれませんよ」
淡々と話す田中に健斗は押された。
「だよなぁ……」
「よろしくお願いいたします」
月は笑ってお辞儀をする。その仕草が一瞬だけ光司と重なった。
「ちゃんと礼儀は教えこんでたんだな」
自分だけ意地を張っていてもしょうがない。健斗は手を伸ばして月と握手を交わした。はじめて、爬虫人と握手をする。月の手はひんやりとしていたが、健斗の体温とすぐに交わり、ほんのりと温かくなっていった。人肌に変わったところで、光司が生き返ったと錯覚するような寒気がして手を振り解く。
「もう、野田さんは子どもなんだから〜」
気にしなくていいわよ、と山田は月の肩を叩く。
「すまん、爬虫人に慣れていないんだ」
「野田さん、そろそろ人外嫌いなんとかしないとマズイですよ。古い体質の警察も人外採用が増えてきたんですから、このままだと新人くんにパワハラで訴えられちゃいますよ」
山田は小さくため息をついた。たしかにここ最近、獣人と爬虫人の採用が増えてきたような気がする。ここの署長も人事異動で爬虫人に変わったような……。
「冗談でもそのようなことを言うな! 縁起でもない」
自分から仕事を取り上げられたら、何が残る? それだけは嫌だ。なんとかして、月を飼いならしておかないと。
「月、暑いだろ。水をおごってやる」
とりあえず、新人には金がない。先輩がご飯や飯をおごってやれば、いくら爬虫人でも悪い気はしないだろう。
「あ、僕。変温動物なので常温だと助かります」
月は申し訳程度に小さく手をあげる。
「女子みたいなこと言いやがって……わかったよ、自販機で買ってくるからここで待ってろ。水でいいよな?」
(あーめんどくせぇ。俺の時は先輩から奢ってもらえるなら何でもいいと言っていたぞ)
「はい、お水で大丈夫です」
「野田さーん、うちの自販機に常温の飲み物はないですよー」
部屋を出ようとしたところで、山田が健斗に向かって叫ぶ。
「あーもう、めんどくせぇ。コンビニ行ってくるからついてこい」
ただ、水を買うだけなのに、なんでこうもめんどくさいんだ。
「あ、ここで僕待ってます。コンビニの冷房が苦手なので」
月は悪びれる様子もなく、淡々と返事をした。一方で健斗の眉間に皺がよる。
「野田さーん、新人配属初日に怒っちゃダメですからね」
山田の後押しに出かかった言葉を必死に抑え込んだ。
「月、そこで先輩方の仕事の様子を観察しておけ! 明日から同じように働いてもらうからな!」
怒りが爆発してしまう前に、健斗は部屋を一直線に走り出した。動き出せば、怒りは収まる。長年の経験だった。
「わかりました」
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