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全部プログラムのおかげ
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「神だなんてやめてよ。僕はただ、自分の好きなようにカスタマイズしただけ」
はぁ、と息を吐き出すと乾燥した喉の奥がひりつき、僕は小さく咳払いをする。
改めて辺りを見回せば、砂一面の大平原。所々に崩れた建物の残骸や、炭のように黒くなった枯れ木があった。
目を凝らすと霞の向こうに廃墟と化した高層ビル群が見える。
「未だに慣れないな……この景色には」
街だった名残をぼんやり眺めていた僕が、ラヴィの目には疲れたように映ったのかもしれない。気遣わしげに眉を寄せ、僕の顔を覗き込む。
「お疲れのご様子ですね。ホームはもうすぐそこですが、よろしければ抱きかかえる許可を頂いても?」
先ほど入手したばかりの重たいオイル缶を背負っているラヴィが、大真面目な顔で両手を広げ、僕を抱き上げようとする。
「だから、いいってば。僕はもう十七歳だよ? あの頃みたいな子どもじゃないんだから」
こちらに向かって伸ばされた手を軽く払ったら、ラヴィはしゅんと悲しそうな顔をした。
「どうかお気兼ねなさらずに、なんなりとお申し付けくださいませ。私は乃蒼(のあ)様のためでしたら、どんなことでもいたしますから」
なんて忠実な執事だろう。
でもこれは、全部プログラムのおかげ。
僕を心配するのも、怒られて悲しそうな顔をするのも、親愛も忠誠も、ラヴィの意志じゃない。
一歩踏み出した足が、何だかズシッと急に重くなったように感じた。
「乃蒼様?」
無言で歩き続ける僕の後ろを、ラヴィが怪訝そうについてくる。僕が不機嫌なことには気づけても、その理由まで察することはできないのだろう。
僕はまた溜息をついて、なんとなく空を見上げた。
「あの日」以来、空はいつでもどんよりと灰色の雲に覆われていて、頬を撫でる風は生ぬるくて気持ち悪い。
あの日なにが起きたのか、当時十二歳だった僕には知る由もない。
ただ、今まで見たこともないくらい青ざめたラヴィが部屋に飛び込んできたから、非常事態であることは直ぐに察することができた。血の通わないアンドロイドが青ざめるなんて可笑しな話だけど、そう表現するのが一番しっくりくるような、とにかく緊迫した表情だった。
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