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世界がこんなにも荒れ果てた理由
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「こんな状況になっても、被害を免れた発電所や浄水施設のAIは、ライフラインを守り続けているんでしょ? 凄いよね」
「ええ。それが彼らの使命ですから。今後もプログラムに沿って、忠実に業務を遂行し続けるでしょう。ですからどうぞご安心ください。この先もずっと、ここをホームとして利用できますよ」
それが彼らの使命。
プログラムに沿って業務を遂行し続ける。
それは、ラヴィも同じなの?
そんな風に僕が考えてしまうなど想像できない彼もまた、所詮は人工知能なのだと思い知る。
なんだか投げやりな気持ちになって、僕は素っ気なく尋ねた。
「……ラヴィはさ、なんで他のアンドロイドたちと一緒に行動しなかったの?」
「他のアンドロイドと一緒に? なぜです?」
意味がわからないというように、ラヴィは僕の問いには答えず質問を返してきた。
「だって人間はアンドロイドの敵だから、本当は僕と一緒にいない方がいいんでしょ」
ラヴィと目を合わせることができず、僕は歩きながら自分のつま先だけを見つめていた。隣から、ため息なのか笑ったのか判断しかねるような吐息が漏れる。
「全てのアンドロイドが人間を敵と認識している訳ではありませんよ。そもそも、私が乃蒼様から離れるなど考えられません」
きっぱりと言い切るような強い口調に、僕は胸を撫でおろす。でも次の瞬間、スーッと血の気が引くように冷静になった。
――あぁそっか、僕から離れないのもプログラムの一部なんだった。
でも、もしラヴィが他のアンドロイドたちのように、バグを起こしたら……。
世界がこんなにも荒れ果てた理由。
それは遡ること六年前。当時発売されたばかりの新型アンドロイドが、人間の命令に背いたことが発端だった。重大なバグがあり、搭載された最新型の人工知能が自我を持ち始めたのだと当時のニュースで言っていた記憶がある。
すぐに人間側もプログラムの修正を試みたが、バグに気づいた時点でもうすでに手遅れだったのだろう。
その頃にはとっくに自我を持ったアンドロイドたちは結託し、インターネットを通じて世界中のほぼ全てのコンピューターを掌握していた。
最新テクノロジーを失った人間はあまりにも脆弱で、あっという間にアンドロイドたちがヒエラルキーの最上位に君臨するようになったのだ。
ところがそれに反発するように、旧型アンドロイドたちは人間側につくことを選んだ。性能では新型が圧倒的に優位だったが、数では旧型が勝り、事態は混沌を極めていく。
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