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たまに、勘違いしそうになる
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「人間は本当に傲慢だよね。『旧型アンドロイドは人間に情と恩義を感じているから、こちらの味方をしてくれるんだ』なんて、都合のいい解釈してさ」
自虐気味にそう言い放った僕に、ラヴィは心外だと口元を歪めた。
「いえいえ。実際に私はあなた様に親愛の情と深い恩義を感じております。決して傲慢などではありません」
「でも、そんなこと言ったって……」
旧型アンドロイドを味方につけた人間側は一時攻勢を強めたが、新型アンドロイドも反撃の手を緩めなかった。彼らはネットを通じ、歯向うアンドロイドの回路に侵入してプログラムの書き換えを行ったのだ。
その結果、人間の命令が絶対ではなくなった旧型たちは、あっさり寝返ってしまった。
結局初めから、情や恩義など存在しなかったのだろう。
あの日。
世界にとどめを刺したのは、自棄になった人類だったのか、それとも人類を見限ったアンドロイドだったのか。
今はもう確かめる術もない。
「ラヴィもプログラムを書き換えられてたら、今頃僕から離れてたよ」
「その可能性を排除するために、私は早々に自らネットを遮断しオフラインモードへ切り替えたのです。誰の命令でもなく、自らの判断で。乃蒼様のお側を離れたくはなかったから」
ラヴィがいつになく真剣な眼差しで僕を見る。その真っすぐな視線を受け止めきれず、僕は思わず顔を背けてしまった。ラヴィは「やれやれ」と笑って僕の頬についた砂を払う。
いつもは冷たいラヴィの指先が、心なしか熱を帯びているような気がした。砂はとっくに落ちただろうに、ラヴィは僕の頬を撫で続ける。
「乃蒼様……」
僕の名を呼ぶ、低く甘く掠れた声。
最近なぜかその声を聴くだけで、自分の体の真ん中が熱くなって苦しい。
旧型のラヴィに自我はない……はず。
だけどたまに、勘違いしそうになる。
「もう、いつまで触ってるつもり⁉ いい加減に……」
「シっ! お静かに」
今しがたまで柔らかく微笑んでいたラヴィが、突然人差し指を唇に当てて僕を黙らせた。そのまま周囲を警戒するような素振りを見せたので、僕の背中にヒヤッと冷たい汗が流れる。
何の物音も聞こえないが、ラヴィのセンサーは何かしらの反応を捉えたのかもしれない。
偵察モードに切り替わった目が鋭く光っている。
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