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なんてあっけないんだろう
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もう上体すら支えるのも難しいのか、セフィドがガシャンと音を立てて再び仰向けに倒れた。例えここが最新の整備工場だったとしても、手の施しようはなかっただろう。
近づく終焉を悟り、僕はどうしていいかわからなくなる。
なのに足は勝手に駆け出していて、気づくとセフィドの傍らに座り込んでいた。
背後からラヴィの静止する声が聞こえたが、構わずセフィドに語り掛ける。
「きっと、眠ったら主に会える。だから、大丈夫だよ」
ラヴィを傷つけられて憎いとすら思っていたのに、そう言わずにはいられなかった。驚いたように見開かれたセフィドの瞳は、むかし見た満月みたいな金色だった。微笑んだセフィドの唇が微かに動くが、もう声にはならない。
でも多分、「ありがとう」と言った気がした。
「乃蒼様、危険です。お下がりください」
ラヴィが僕を庇うように前に出る。でももう、セフィドが動く気配はまるでない。セフィドから発せられるノイズが徐々に小さくなっていき、最期にブゥンと電源が落ちる音がした。
終わりはなんてあっけないんだろう。
命が消える瞬間を目の当たりにし、呆然とする僕の肩にラヴィが手を添える。
「……彼は後で私が弔います。ですから一度、住居へ戻りましょう」
セフィドを「片づける」ではなく「弔う」と表現したラヴィが、ガラス細工でも扱うかのようにそっと僕の身体を抱き上げた。
横抱きにされた僕は、しがみつくようにラヴィの首に両腕を回す。
ラヴィの肩口に顔を埋めながら、僕はたまらない気持ちになってぐずぐずと泣いてしまった。
もう子どもじゃないなんて言っておきながら、僕の中身は十二歳のあの日のまんまだ。
「襲われて恐ろしかったですよね。申し訳ございませんでした」
「違う。セフィドみたいに、ラヴィもいなくなったら、どうしようって……」
僕が泣いてる理由に納得したのか、ラヴィが「あぁ」と掠れた声を出す。
「私は乃蒼様を置いていったりしません。お約束いたします」
「絶対だよ。どこにも行かないで」
住居にたどり着くと、ラヴィは僕をソファの上に座らせ、まだ乾かない涙を人差し指の背で優しく拭ってくれた。
「今日は特別に、温かいお茶をご用意しましょう」
子どもをあやすように僕の額に唇を落とし、ラヴィは湯を沸かすためにキッチンへ向かう。
カウンターの上へ背負っていたオイル缶を降ろした瞬間、ラヴィの肩の辺りに、バチッと静電気のような青い光が走った。
「ラ、ラヴィ……⁉」
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