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それは私にとって、死に等しい
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「本気でおっしゃっているのですか? 都合よくメンテナンスだけして、すんなり帰してもらえると? 私がアンドロイドのコミュニティに受け入れられてしまったら、もうここには二度と戻れませんよ」
もしかしたらと考えてはいたが、ラヴィに改めて「二度と戻れない」と断言されると少し怯んでしまう。
そんな僕の弱気を見抜いたのか、ラヴィは間髪入れずに畳みかけた。
「修理の際に、恐らく記憶チップを確認されるでしょう。今まで人間と暮らしていたとなれば、メモリを綺麗にリセットされる可能性が高い。そうなれば、私はもうあなたを思い出せなくなる。……それは私にとって、死に等しいのです」
悲痛な面持ちで、ラヴィが僕を見つめる。
――お願いだから、そんな人間みたいに傷ついた顔をしないで。
「会えなくなるのは辛いけど……でも、ラヴィが動かなくなって死を迎える方が、もっと辛いから……」
「先ほどは、どこへも行くなとおっしゃったではありませんか。死とはつまり何なのです? 会えなくなることと違いはあるのですか」
「あるよ」
背の高いラヴィを見上げながら、僕は続ける。
「だって僕を忘れてしまっても、どこかで動いてさえいればまた会えるかもしれないだろ。でも、ここで朽ちたら本当の別れじゃないか」
「……なるほど」
あまり納得していなさそうなラヴィが、礼儀的に相槌を打った。
その上で、容赦なく反論してくる。
「私たちが再会できる可能性はほぼゼロに等しいですが、万が一会えたとしても、私はあなたを認識できない。満足するのはあなただけ。私の意志などお構いなしですか?」
「そんなこと……」
言いかけて違和感を覚える。
ラヴィの、意志? 旧型のアンドロイドに?
「世界がこんなことになり、あなたは他者と交流する機会を極端に奪われた。それ故、あなたの言動にはどこか幼さが残ります。そんなあなたが、この過酷な世界を一人で生きていけるとお思いですか。私がいなくても、あなたは平気だとおっしゃるのですか」
「でも」と僕が食い下がると、その先を言わせたくないのか、ラヴィが強引に僕を抱き寄せた。
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