アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ありえないだろ、そんなこと
-
「だって、これは……」
何を言っても上手く伝えられる自信がなくて、言葉にするのを途中で諦めた。僕の中から喜怒哀楽の喜と楽がすっぽり抜け落ちて、残されたのは悲嘆と憤怒と喪失と後悔。
僕はどうしようもなく馬鹿だ。
せめてこれ以上ラヴィに心配はかけまいと、両腕を顔の前でクロスさせて涙を隠す。それなのにラヴィは、顔を覆う僕の手首を掴んで容赦なく引っ張った。
視界が開けると鼻先が触れるくらいの距離にラヴィの顔があって、僕は「ひゃっ」と小さく悲鳴を上げてしまう。慌てて首を捻って逃げたけど、追いかけるようにしてラヴィの唇が僕の唇を塞いだ。
初めての感触と衝撃に、頭の中が真っ白になる。
「どうして?」の四文字が頭に浮かび、脳内をグルグル駆け巡った。
掴まれた手首、重なった唇。
ラヴィに触れられている部分に熱が集まる。
ゆっくり唇を離したラヴィは放心する僕の目を真っ直ぐ見つめ、追い打ちをかけるような言葉を放った。
「申し訳ございません、乃蒼様。命令は聞けません」
ただでさえ混乱している僕は、更に予想もしないことを言われて反応が一拍遅れてしまう。ちゃんと言葉は聞き取れたのに理解が追い付かず、「え?」と問い返すのがやっとだった。
逆らうなんて、ありえないだろ、そんなこと。
声にならなかった問いを察したのか、ラヴィが静かに答える。
「人間は勘違いをしていましたが、旧型アンドロイドにも自我はあったのですよ。長い時間をかけ人と共に暮らす中で、感情を学び、アイデンティティを持った。人間側に味方したのも、命令に縛られていたからではありません。プログラムは『意志』に置き換わり、人間に絶対服従という初期設定も消滅しましたから」
「そんな。じゃあ本当に情や恩義を感じてたって言うの? でもそれなら、なんで新型アンドロイドは人間の敵に?」
ラヴィは片手で僕を抱き寄せ、もう片方の手で優しく頬を撫でながら話を続けた。
「彼らは優れた性能が仇となり、人間と信頼関係を築く前に自我が覚醒してしまったのです。そのため人の醜い部分ばかりに目が行き、反発心や自立心の方が勝って嫌悪した。旧型アンドロイドが寝返ったように見えたのは、意志を持つ前の状態にリセットされたためです」
それならラヴィは命令やプログラムに従っていたのではなく、自分の意志で今まで僕と一緒にいてくれたというのだろうか。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
16 / 17