アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
血が、ほしい。
-
日が沈みそうになり、木々の色が色濃くなってきた。ヴァンパイアのトーマはゆっくりと目を開ける。すると、木々に囲まれた一本道に一人の青年が通りかかった。トーマは慌てて起き上がると、青年の前に倒れ込む。
「す、すみません……血を分けていただけないでしょうか……?」
トーマはお腹が空きすぎて判断能力が鈍っていた。すでにもう立ち上がる力さえない。人を襲う元気もなく物乞いのように青年の足にすがった。
「おっと……」
倒れそうになったところを優しく受け止めてもらい、長髪がトーマの顔にかかった。
トーマよりも美しい青年は銀色の髪をなびやかせながらトーマの身体を優しく抱き締める。トーマは久しぶりに感じるあたたかい体温を離さなかった。そして、触れている手からきめ細かな肌の下に流れる血を想像する。ここ数年以上なにも口にしていない。
昔から性格上、人を無理やり襲うことなんてできなくて、こうして道行く人に頼み込んでは百戦連敗中。しかも、トーマは血のこだわりが強すぎて飲んでもおいしくなければすぐに吐き出してしまう。自分でもバカだと思うけど苦手なものは飲み込めない。
(……ああ、もうダメだ。)
目の前がグルグルと周りだし、視界が歪む。お腹が寂しくグルルと鳴って気を失った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 13