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#1 Prologue
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ずっと昔、愛は悪そのものだと思っていた。
いっそ一欠片も持っていない方が幸せだ。余計な悩みや不安を感じることがない。
愛なんて、見えない呪いだと思っていたのに。
「難しい顔して何考えてるんだ?」
色鮮やかな花畑が地平線上まで続いている。薄青の空を見上げていると、ふと下から手が伸びてきた。
てっきり寝ていると思ったのに、黒髪の青年はこちらを見上げて微笑んだ。膝枕をしている最中なので、大人しく頬を撫でられる。
「うーん。昔のこと」
その手にそっと自分の手を重ね、自ら頬を擦り寄せた。
「昔の、小さくて可愛かったお前のことを思い出してた」
「何百年前の話だよ。そろそろ忘れようぜ」
げんなりしてる彼に苦笑し、いつもより優しい声で宥める。
「嘘嘘。今も可愛いから」
「そういう問題じゃないんだなぁ……今は夫婦だろ?」
硝子玉のような瞳に自身が映る。飲み込まれそうだけど、改めて認識する。
「はは。そうだった」
昔と違い、愛があるから俺は生きていられる。
「忘れてるなら、また一から教えようか? 明日立てなくなるだろうけど、覚悟してくれよ」
「いやいや、大丈夫!」
そして愛を奪う者もいれば、愛を与える者もいるのだ。その均衡に────彼に、どれほど救われたか。
「俺はすっ……ごく愛されてる。分かってるから大丈夫だよ。リオ」
ちょっと恥ずかしいけど、彼を心配させないよう言い切った。
何百年一緒にいても全然飽きさせてくれない、世界で一番愛しい青年。
彼に奪われた俺は、きっと世界一幸せだ。……それはまだまだ恥ずかしくて言えないけど。
いつかは声にする日がやってくる。
瞼を伏せ、今は風に運ばれてくる花の香りを深く吸い込んだ。
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