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#3
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この力を一番厭い、憎んでいるのは自分だ。けれどこれは抑えようと思って抑えられるものではなくて、無意識のうちに周囲に働いてしまう。
だから本当は誰とも関わらず、のらりくらり過ごせる場所を探している。
そこへ行けたなら、もう誰かを苦しめることもない。
ほとんど死に場所と同じだ。このままずっと、死ぬまで独りでいいと心から望んでいた。
ひとまず汗で汚れた身体を綺麗にしたくて、山の麓にある泉へ向かった。比較的見つかりにくい場所の為、普段から水浴びに利用している。
それにしても今日は特に怠い。苦しくて、意識が朦朧とする。
何とか堪えながら身体を洗っていると、ふと甲高い声が断続的に響いていることに気付いた。
「何だ……?」
あまり聞き馴染みのない声だ。魔獣や怪物の子どもにしてしては小さいし、可愛らしい。
最初は放っておこうと思ったが、あまりに泣き止まない為上着だけ羽織り、声の方へ歩いていった。
親が近くにいたら襲われそうで嫌なので、足音を殺しながら木々の合間を縫い、開けた場所を覗く。そこには白く、艶々の赤ん坊がいた。
どうしよ。すっご泣いてる。
気付くと、先程の疲れは吹き飛んでいた。
獣みたいな姿をしていたら大事に飼って可愛がるという手もあったけど、人型だ。
責任重いし、見なかったことにすべきか。俺よりもっとまともな神が拾って育ててくれることを祈って。
…………。
いやいや。そんな奴、この世界にいるのか?
自分より弱いと確信したらその場で殺すか、奴隷にしてボロボロになるまで使う奴らばかりだ。彼らに見つかれば、この赤子は即座に生を閉じるだろう。
仕方ない。ある程度成長して、自衛ができるようになるまで見てやるか。
持っていた白い布で赤ん坊を包み、最後にもう一回親がいないか確認してからその場を去った。俺が誘拐してると思われたら八つ裂きにされそうだから、もうかなりの時間全方向を確認した。
結局親が見つからなかった為、廃れた街へ向かい館を借りた。成り行きとはいえ、まさか初の子育てをすることになるとは……。
不安とプレッシャーで具合が悪くなる。正直俺も泣きたいぐらいだけど、この子を守れるのは自分しかいない。ここは腹をくくろう。
それによく見ると、本当に愛らしい顔をしている。丸々して、肌が艶々で、宝物みたい。
「可愛いな~、お前」
急拵えのベッドに寝かせ、床に膝をつく。もちもちした頬をつつき、ヴェルムは微笑んだ。
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