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#5
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「はあ。可愛い」
寿命のない神にとって、月日が流れるのは一瞬だ。
ヴェルムは前屈みになり、深いため息をついた。
「何でこんな可愛いんだろ。俺が腹痛めて産んだ子だから……?」
「やだ、とうとう気が触れたの? 確かに可愛いけど」
早十数年。赤ん坊はすっかり大きくなり、今では立派な青年に成長した。
ヴェルムはベッドで寝息を立てている青年を見下ろした。艶やかな黒髪をそっと梳いて、青年の額にキスを落とす。
彼はもう自分と背丈も変わらない。それでも就寝中は赤ん坊扱いしてしまうのだから、大概重症だ。
「あぁ、でも可愛いとは違うのかしら? 良い男になったわよね」
嫉妬の女神は首を傾げ、満足そうに扉へ向かった。成長してからもこうして時々様子を見に来てくれる為、本当に感謝している。
「だな。ありがとう」
「いーえ。子育て終了……と思ってたけど、彼寝てばっかりだものね。まあ気長に頑張って」
彼女は手を振って部屋を出ていった。
確かに、手放しで喜べない事情もある。それは少年から青年に成長した彼が、ほぼ一日眠っているからだ。
推測に過ぎなかったが、間違いない。天上で生きるべき神の子が、この地下に落ちてきてしまったのだろう。悪い空気が充満している為、眠ることで身を守っている。
本来なら上の世界に連れて行ってやりたいが、地下に落ちた自分は途中まで向かうことも許されない。となると、もう他にしてやれることはなかった。
館には邪神に見つからないよう特別なカーテンをかけている。後は彼がここから出たいと言った時、手を貸してやれたら……。
しかし本音を言えば、その日が来てほしくない。
彼は、目を覚ました時だけは自分を求めてきたからだ。
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