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#7
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「あぁ、それに寝てる時もちゃんと聞こえてるよ。ヴェルムの優しい声とか、夜中にだけ聞こえる荒い息遣いとか、全部」
「はっ!?」
今、さらっと恐ろしいことを言われた気がする。心当たりもあるし、気まず過ぎて嫌な汗が流れた。
リオは露骨に狼狽えているヴェルムを抱き寄せ、お湯が張った浴槽に誘い込む。
「俺も本当は妬いてる。俺が寝てる間、お前が他の男と過ごしてることを知ってるからさ」
「うっそれは……。仕方ないんだよ。こんな世界でも一応仕事があるんだ」
法や秩序こそない地下世界だが、力のないものが安心して留まるには付近の主にいわゆる滞在費を収めなければならない。金銭には価値がない為、雑用だったり、情欲を満たす為だったり、様々だ。
生きていく為には仕方ない。ヴェルムは夜の相手をすることで暮らしを成り立たせていた。
自分の容姿に惹かれて近寄ってきた神には身体を明け渡し、快楽を与えた。最初こそ自己嫌悪でおかしくなりかけたが、次第に慣れてしまう。
希望のない世界で上手く生き残るには心を殺すことが一番だ。愛情を奪う特性を活かし、依頼で恋愛関係にある神々の仲を引き裂いたこともある。
……いつ誰に殺されても仕方ないほど、俺は邪悪な神に変わった。
不全なリオを守る為にやったなんて、口が裂けても言う気はない。彼を拾ったのも育てたのも、全て自分のエゴだ。
寂しかったからに過ぎない。この暗い世界で、光が欲しかった。
「とにかく俺はできる限りのことをするから心配するな。お前がこれまで通り静かな生活を望むなら、な」
何とか彼の手から逃れ、浴室から出る。リオも続いて浴槽から出た。
後ろからぬれた髪や頬を撫でられ、くすぐったさに身を捩る。お互い一糸まとわぬまま、深い口付けをした。
自分は最低だ。父親と偽っていることも、外が危ないと言い聞かせているのも……結局、可愛い彼を閉じ込めておきたいからだ。
いつまで子ども扱いをして、ここに留める口実をつくっている。けれど彼から与えられる熱に理性をとかされている。
彼の求愛は素直に嬉しい。でも今の生活を続けるには限界がある。
汚い仕事は耐えられるけど、彼が全てを知る日が怖い。
「ごめん……」
これは何に対しての懺悔なのか。
力なく呟いた言葉を聞くと、何故か彼まで苦しそうに目を細めた。
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