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#9
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突然のことに反応が遅れたが、床に手をつき顔を上げる。
何が……いや、誰がやったんだ?
痛みを堪えながら扉の向こうに視線を移す。そこには、いるはずのない人物が佇んでいた。
「リオ! 何でここに?」
「それは後。逃げるぞ」
夢でも見てるみたいだ。館で眠っていたはずのリオが現れ、自分を抱き起こしている。邪神が起き上がる前にヴェルムの手を引き、走り出した。
リオは虫の知らせかな、等と呑気に呟きながら後ろを振り返った。
「あれ、まずいかな? 捕まったら殺されるかな」
「間違いない」
ため息を飲み込んで答える。この上なく絶体絶命な状況にあるのに、それほど恐れてない様子のリオにこちらまで気が抜けてしまった。
「お前って奴は……何てことすんだよ」
「何、まさかあのまま無理やり抱かれたかったのか?」
「じゃなくて! 勝手に館から出て……お前、今息してるのも辛いだろ」
黒い霧に包まれた館から脱出し、何とか街からも離れることができた。しかし谷口に入ったところでリオは明らかに顔色が悪くなり、激しく咳き込みだした。
不安と心配が最高潮に達し、こっちまで息が苦しくなる。
彼の肩を支え、互いの額をつけた。
「俺なんかの為に……何でこんな……っ」
「あーもう、助けに来たのに説教ばっかだな」
「俺は自分が死んだって構わない。でもお前になにかあったら……そっちの方がよっぽど嫌なんだよ!」
彼の血に滲んだ唇を見て、ますますパニックに陥る。
「お前を守る為に、酷いことや汚いこともたくさんしてきたんだ。でもお前がいないと……俺はもう、何にもできなくなる……!」
最悪だ。こんなこと、死んでも言うべきじゃないのに。
もっと他に言いたいことがあるのに、絶対言わないと決めていた身勝手な言葉が溢れ出した。
これでは彼に失望されるだろう。自分自身に吐き気がして、消えてしまいたい衝動に駆られる。
「……わかってるよ」
こんな状況を作り出したのは、他でもない自分だ。けど彼はそれを責めず、俺の頬を優しく撫でた。
「こんなガキみたいに泣きじゃくるぐらい、俺のこと大事に想ってくれていた、ってことはな?」
「お前……っ」
リオの言う通り、ヴェルムは大粒の涙を零していた。
こんな風に誰かの前で号泣したのは、恐らく生まれて初めてだ。
「本当はすごく弱くて、寂しがりだってことも知ってる。多分寝てる間もずっと傍にいてくれたから、その想いが俺の中に流れ込んできてたんだ。目を覚まして、強く抱き締めてやりたいっていつも思ってた……だから後悔なんかしてない。するわけない」
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