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走馬灯のなかで
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「あれ、倉富二(くらふじ)くんじゃん」
女の声がした。蓮は不機嫌そうな顔で振り返る。
人混みが多い駅前で声をかけられるなんて最悪だ。乗りたい電車に乗り遅れてしまう。ただでさえ、夕方は混雑するというのに。
同じクラスの才賀(さいが)に声をかけられた。才賀の隣に黒髪の男性が立っている。三白眼の黒目に、アシンメトリーの黒髪。
「あ、ほくろみっけ」
黒髪の男が蓮の頬にふれる。蓮は動揺して、手を弾いた。蓮の顔にほくろはない。
「あ、ほくろじゃなかった。ゴミ」
申し訳なさそうに謝る男性。蓮は触れられた頬が熱くなる。そっと自分の冷たい手を置いた。
「もう、おにいちゃんったら天然ぶちかまさないでよね」
才賀はヒジで兄をつく。才賀の兄は、頼りなさそうに笑っていた。笑うと、蓮の心臓の音が早くなる。不思議そうに今度は、胸に手を当てた。
「あ、おにいちゃん。早くしないとライブ間に合わなくなる」
才賀は兄の腕を引っ張り、先を急ごうとする。声をかけたのは自分なのに、振り回される兄。力関係がすぐにわかる。
「じゃあね」
今度は、蓮の頭を軽く撫でる才賀の兄。
高校生になり、頭を撫でられることが少なくなった。蓮の中で、妙にふわふわした感覚と、ゾクゾクした感覚が入り交じる。才賀は兄の腕を握り走り去った。
「兄妹でスキンシップが多いんだな」
人混みが多い駅前で、才賀の兄の姿が頭から離れない。なぜ、こんなにも心がかき乱されるのかわからない。歩いていれば、車にクラクションを鳴らされるほど、周りを見る余裕がない。
家に帰ると誰もいない。蓮の両親は離婚している。蓮は父親に引き取られた。父親は夜遅くまで帰ってこない。
帰ってきたところで、やらされるのは母親役。
気持ちが落ちる前に、才賀の兄の顔を思い浮かべる。歳は大学生に見えた。アシンメトリーな黒髪、三白眼の黒目。そして、肌に触れた大人の手。ゴツゴツとしていた。自分の手と比べてみようと、手を広げる。
骨張った手は、魅力的な手とほど遠い。
「そういえば、名前を聞きそびれたな」
明日、才賀に聞こうと目を閉じる。
ーー数分後、下半身に激痛が走った。
「あーだる」
勃起していた。スウェットの中に手を入れる。最初はスウェットを脱ぐのがめんどくさかったが、膝まで下ろした。やりづらかった。
「はぁ、はぁ、はぁ」
才賀の兄は蓮より身長は高かった。三白眼の瞳に、見下ろされる妄想。その瞬間、びゅるるっと、白濁が飛んだ。はぁ、はぁ、と息が荒くなる。汚れた手を見て、すぐ不快感に陥った。
「同級生の兄貴に告白はやばすぎる。返事によっては、学校生活が終わるぞ」
言っちゃだめだ、言っちゃだめだ、言っちゃだめなんだ……呪文のように繰り返し吐かれる言葉。蓮は泣きながら、陰茎を握りしめた。
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