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一匹の烏
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一匹の烏(カラス)が下り立った。黒い羽の姿を見ると、無意識に劉星の姿が思い浮かぶ。
「意識し過ぎだろ」
蓮は烏に背を向けて歩き出す。夕暮れの一本道、普段より夕焼けが綺麗だった。辺り一面、オレンジ色に染まっている。
今から行く場所に、才賀の兄は来るかもしれないし、来ないかもしれない。
「さすがに来るよな」
蓮は立ち止まった。勇気がなくなったからだ。劉星と才賀の兄は記憶を共有していないかもしれない。
「いきなり天狗ですか? って聞けないよな。天狗に誘拐されたことありますか……が無難(ぶなん)? いや誘拐されること自体無難じゃないよな」
蓮はブツクサと独り言を言う。周りには誰もいないので、蓮の独り言を気にするものはいない。
夕日が沈んだ。辺りは一瞬にして暗闇になる。嫌な予感がした。
「またおうたな」
聞いたことがある声。上から重圧を感じるほどの、人の声ではないもの。蓮はゴクリと飲みこんだ。身構えながら声がする方向へ身体を向ける。
「お前は……」
そこにいたのは、襲撃してきた天狗。山伏の格好をしている。天狗はヤツデの葉を蓮に向けた。
「ワシの劉星と関わるな」
身震いするほど、敵意をぶつけられた。ここで抵抗すれば攻撃される。それでも、蓮は引き下がらなかった。
「劉星の方から関わってきたんだ」
本当は自分から望んでいたかもしれない。それでも最初のキッカケは、劉星からだ。
「四分の一しか力がないお前が、ワシに勝てるとおもてんのか?」
天狗がヤツデの葉を振るう。ヒュン、と鋭い風が蓮の頬を切った。
「四分の一……ってことは、劉星がハーフってことだよな」
蓮はジーパンのポケットに手を伸ばす。
「ってことは、劉星が天狗の精液を受け止めて天狗になった」
ポケットから出したのは、扇子。
「なら、俺だって天狗の技が使えるってことだよな!!」
蓮は扇子を広げて力いっぱい振るった。ビュンッと三日月型の風が天狗に飛ぶ。
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