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天狗の最期
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光のなかに川が見えた。いや、海だ。潮の臭いがする。
「瞬間移動……?」
さっきまで街中の一本道にいた。それなのに海のど真ん中にいる。
「違う、互いの神通力がぶつかり合って爆発して吹き飛ばされた」
劉星は蓮を抱えながらバランスをとって飛んでいた。下でバシャバシャと水音がするので、下を見ると溺れている天狗がいた。
「おい! 劉星!! わしを助けろ!!!」
「天狗って泳げない系?」
泳いでいるよりも空を飛んでいるイメージがある天狗。そうか、天狗はカナヅチなのか。
「あの天狗が履いている鉄下駄がめちゃくちゃ重いし、翼も濡れると飛べなくなる」
劉星は冷たく答えた。
「いいのか、見殺しにして」
さっきまで倒すつもりでいたが、天狗の死を目の当たりにすると急に不安になってしまった。
「構わん。いつか決別しなくてはいけないと思っていたから。ただ、やつの死を見届けないとまた襲撃されるから見届けたい」
「劉星がそうしたいなら俺はいいけど」
劉星と会話をしているうちに、あの強くて歯が立たなかった天狗はあっけなく沈んでいった。
「よし、これで神通力が使えるな」
劉星が放つ不思議な光に包まれると傷だらけの身体が癒えていく。
「終わったのか?」
まだ天狗の死を受け入れられない。海の中から飛んで出てきそうなほどだ。たまに海へと目線を落とすが、静かに波を打っている。
「終わったみたいだな」
神通力の光がなくなったことで、気づけば日が沈んでいる。辺りは暗闇に包まれた。互いに抱きしめ合わなければ、自分の身体がどういう状態なのかわからないほどだった。
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