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再会
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卒業式の日に声をかけてきた奴だ。
「なんな(なんだよ)。なんで目の前おる?」
「なんでって、隣俺たい。大家から聞いとうぞ。まだ荷物届いてないっちゃろ?俺んちにきぃー(来い)」
背の高い奴が、視線を僕の視線に合わせるように覗きこむように言った。
「いらん。僕がここに引っ越ししてくる事知っとった!?」
「あぁ、お前の兄ちゃんと俺の姉貴が大学の先輩と後輩たい。やけんくさ(だから)、ここに引っ越すって教えてもらった。布団もないしガスもまだ通じてないんやろう?水しか出んばい。俺んちの風呂使いー。布団も二組あるけん」
僕の手と奴の手が触れようとしていた。
僕は手を後ろに引っ込める。
「いらん!なんでこんなことすると!?」
僕の手をひこうとしていた手をどうしたものか、と奴は一瞬ひるんでいたように見えた。
一瞬の間と、奴が何かを決したように口をへの字にぐっと結んだ後、
「お前と仲良くなりたいけんたい!!いいから来いっ!!」
そう言うと有無を言わさず、ためらっていた奴の手が後ろ手に回っていた僕の手をガシッとつかむと引っ張った。
「ちょっ!?」
急に力の強い奴に引っ張られ、抵抗する間もなくズルズルと引っ張られる。
逞しい広い背中を見て
「あぁ、でかい背中やなぁ。なんでこうなった。なんだなんだ?」
とこの展開に頭がついていかなかった。
「お前言っとったよな?俺もお前をバカにしとったって。誤解やん。俺はお前ん事を一回も悪く言った事ない。周囲と笑った事もない」
「は?」
「お前が俺の事もそんな風に思うとったと知って悲しかった。でもそれ以上に俺がそう思わせてたんかな?ごめんな」
「は?」
奴の家のドアがバーンっ、と勢いよく開けられズルズルと引きずられる。
「ちょ、靴!靴!」
奴はサンダルを脱ぎ捨てて家に上がっているが靴を脱ぐ事すら許されない勢いで僕は引っ張られていた。
「靴~!?あー、いいよそのままで」
「はぁ?」
じれったそうに引っ張ろうとする奴に、こいつおかしい奴かも、と思うと同時に笑いが込み上げる。
「ふふ、いきなり靴で上がれって言われても。手が痛い」
「うわ、ごめん!!」
色白の手が強く握りしめられていたせいでほんのりと赤く染まっていた。
「ごめん。ほんとにごめん。でも逃したくなかったっちゃん。ずっと見とったけんさ。もう後戻り出来んったい。だけんどーしてもそばにおりたい」
「はい?なん言いよるか分からん」
「お前が好いとうって事たい!!」
「は?」
「......好いとうったい」
奴は僕をまっすぐ見てそう言った。
やっぱりこいつおかしい。多分残念なイケメンってやつだ。
女子にむちゃくちゃもてたんだろうなぁ。とその男性らしい鋭角な顔付きと色黒な肌と、まっすぐ僕を見つめる目を見ながら思った。
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