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カオス袋
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僕は背後で何か言っている長野に目もくれず玄関に向かい靴を履いていた。
「布団なかろ?お湯もまだ出んばい。風呂入って行きーって」
「うっさい、変態。一日位なんとでもなる。ここにおったら危険たい!!」
「そこまで言わんでも....」
「黙れ。近づくな。関わってくんな」
「俺隣やし。関わるし、絶対付き合う事なるし」
苛立って後ろを振り返ると、長野がニヤニヤしながら僕を見下ろしていた。
「あぁ、毎日一緒にいられるんやなぁ」
と長野が言った。
「黙れ、変態」
と吐き捨てて、隣の自分の部屋に戻った。
「一体なんなん(なんなんだ)?これなんなん(なんなんだ)?頭が追いつかん....」
こういう状況って警察動いてくれるのかな、と考えていた。しかし、なんと説明しよう。
相談したり頼るべき友人もいない。家族は....一切頼らない。
頭が痛かった。
なんでこんな事になったのか。
長野の言葉を思い出しながら考えを巡らせた。そして一つの答えを導き出した。
(刺激しないように。得体が知れない。三年間も見てた言っとったし、隣にまで来とる。刺激して怒らせないように。体格も全然違うし力で来られたら僕は何も出来ん)
なんで東京来て初日に身の危険感じないかんのさ。。。
寝っ転がって、蛍光灯を眺めていたら急に怖くなってその日は電気も消さず一睡も出来なかった。
朝6時。
眠れず、さらに悪い事にお腹がすいていた。
あの後、部屋から一歩も出られなかった。
夕食も食べず無音の何もない部屋でじっとしていたのだ。
コンビニを探そうと思い、洗面所で顔を洗う。まだ水が冷たい。
バッグからタオルを出して、ゴシゴシと顔を拭いて髪の毛を手櫛で少し整えてからそっとドアを開けた。
なんとなく見られているようで、ドアの物音で長野が出て来るんじゃないか、と警戒していた。
「ん?」
ドアノブに袋がかかっていた。
中にはサンドイッチやおにぎりやらが統一感なく入っている。
手紙も中に入っていた。
《おはよ。
何もないだろうから朝飯買って来た。
昨日インターホン鳴らしたけどなんか鳴ってないみたいやし、夕食買ってかけてたけどそのままやったから夕飯は食ったんかな?
それはいらんやろうから持って帰る。
朝飯、寝とるかもと思ったけん、またドアかけとく。買ってたら邪魔やろうけど食ってくれ。
荷物届くの今日やろ?
大家から聞き出した(笑)
ガスも開通とか今日忙しいやろうし、手伝うよ。また後で》
インターホンの音が出ないようにしといたからそりゃ鳴らんわな。。。。
手に持った手紙と、コンビニでとりあえず全種類買って来ました!という豊富なラインナップが入っているコンビニ袋。
パンにおにぎり、サンドイッチに、ペットボトルのお茶やコーラやらコーヒー飲料などがどっさり入っている。
「そんなに僕が食べる人間に見えるんか....」
と言葉に出して無言になった。
そうじゃないのは分かっていた。
僕の為に全種類の勢いで買って来たんだろう。
何が好きなのか、とか考えながら買ったんだろうな。そしたらこんな風になったんだろうな。
僕は大きく溜息をついた。
こんな事をされて無視したり何もなかったように、このコンビニ袋と手紙をゴミ箱に捨てられる程腐った人間じゃなかった。
(はぁー、相手は変態だし僕を狙っとるわけだしこれ罠かもしらんけど)
疑心暗鬼だったが、僕は律儀で潔癖な自分の性格を少し恨めしく思った。
僕は次にこういう行動をすると、自分で分かっていたから。
チッ、と舌打ちをして、僕は自分の部屋の玄関を出ると隣の部屋のチャイムを鳴らした。
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