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作戦ミス
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長野はチャイムの音で目が覚めた。
「うぁー!!!」
大きなあくびが出る。
昨日松永が部屋に怒って戻ってからはベランダに出て松永の部屋のベランダを見てみたり、物音がしないかなと壁に耳をくっつけたりして落ち着かない夜を過ごしていた。
松永の部屋のインターホンを鳴らしても反応がない、インターホン自体の音がしない。
「そんなに怒らんでも...」
俺は弁当の入った袋を持ってシュンとしていた。
ドアノブにかけて帰ったがそれでも気になった。
たまに玄関に出ては、袋がなくなってないかな、くそっ!!まだあるやないか....を繰り返した。
朝5時にコンビニに行き朝飯を買う。
(松永いつも学食で残り物のメニューを食べてたから好き嫌いが分からんなぁ)
悩んだ末、おにぎり全種類とアンドーナツやらサンドイッチ数種類と、朝はコーヒー派かジュース派か紅茶派か牛乳か...でカゴの中身はカオスな状態だった。
(寝とるかな?)
インターホンは鳴らさなかった。
手書きの手紙と袋をかけて部屋に戻る。
寝てなかったが俺は目が冴えていた。
松永の首筋のいい匂いやら、触れた手の感触、背後から抱きつくように触って引き止めた時の体のラインを思い出してナニをした。
そうしたら、いつの間にか寝てしまっていたらしい。
もう一度チャイムが鳴った。
「松永!?」
寝ぼけている場合じゃねぇ!
玄関に走って扉を開けると松永が立っていた。
松永の顔が引きつっている。
俺が上半身裸でボクサーパンツだからか?
「えーと、部屋に上がりー」
と声をかけたが
「なんか着ろ、変態」
と即座に返された。
「男同士やけん気にせんでいいやん」
「ふつーの男同士ならね。。。」
松永は疲れが顔に見えたが、髪の毛が少しはねて白いシャツから肌が少し透けて見える。
「な.何抱きつこうとしとるっ!?」
「え?あ、ごめん。寝ぼけてて」
「....帰る」
松永が踵(きびす)を返したので慌てて
「冗談冗談!なんもせんし!!クソ真面目やなぁー。用事で来たっちゃろ。なんもせんけん上がりー」
「いや、ここで」
「いいから上がれって!」
拒む松永の腕を引っ張って玄関に入れるとドアを閉めた。
「そんな怯えんでも。。。なんもせんって」
引っ張った松永の腕が小刻みに震えていた。
(お前男なのになんでそんな外見も中身も繊細なんや.......くそ!!やばい、静まれ俺と息子!今元気になっちまったら今度こそ松永に愛想つかされる!)
「お、怯えとらん。お礼言わな思って。これ」
コンビニの袋を前に突き出す。
「あぁ、いいっていいって。食べた?」
「まだ。お金払う、いくら?」
松永が財布を取り出しながら聞いてくる。
「いらんって。食べてないん?俺も今起きたけん一緒食べよう」
「..........」
「俺と食べるの嫌?」
「分からん。昨日からめまぐるしくて。分からん」
混乱している。俺のせいなんだが。
自分を強がって見せたり、飾る事のない正直な気持ちなんだろう。
「襲ったりとか無理にとかはないよ。ただ好きなだけで。迷惑かもしらんけど。友達にはなろうと思わん?」
「誰もいらん」
松永は下を向いた。
「じゃあさ。お礼もお金もいいけん、ご飯一緒に食おう?お礼はいいけん、一緒食べよう。服もちゃんと着る。なんもせん。一緒に朝ごはん食べよ。それ位いいやろ?」
松永の目を見て精一杯伝える。
「....いいよ」
松永は基本優しいから断らないとにらんでいた。
あの猫に見せてきた優しさとか、学校生活の中で例えば、ほんの一瞬誰にも気付かせないような松永の一面を見てきたから分かっていた。
こんな言い方をすれば松永は断れないだろうって分かっていたんだ。
やり方が卑怯かもしれない。
分かっていたが、松永にそばにいて欲しいからこそだった。
ただ俺は目の前で混乱して疲弊している松永を見て、それが間違っていると思ってしまった。
恋愛ってこんなんなのか?
俺の試合運びで監督から何度も言われた言葉を思い出した。
「お前、キャプテンぞ!?キャプテンなのに一人突っ走ってどうする!?周り見ろ!仲間ちゃんと見らんかっ!」
周りを見た時、目の前には疲れきって混乱している松永がいた。
これじゃない。
「松永ごめん」
「え?」
「お前ん事大事に思っとうし、傷つけたり悲しませたり疲れさせたいとは思っとらんのやけど、俺分からん。初めてやけん分からん。でもさ、今は一緒に朝ごはん食べたいんだ。今それしか頭にないんだ」
うなだれている俺に松永の視線を感じた。
「うん、いいよ。食べよう」
松永はそう言うと、靴を抜いで部屋にあがった。
「どうしたん?飯食べるんやろ?」
「お、おぅ」
振り返った松永に声をかけられて我に返った。
さっき殊勝にも、なんもせんと言っておきながら視界に入った自分のベッドと、そちらに歩いて行く松永を見ていやらしい事を想像したのは言うのはやめておこうと思った。
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