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奥多摩(3)
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車内で俺と松永に挟まれて座るモリクミは髪がべったりと顔に張り付き、化粧も落ち気味で見るも無残だった。
「おい。カッパのタイツなんか着なくても化け物みたいになってるぞ、モリクミ」
「長野くーん、ひどい!!乙女心は傷つきやすい!!松永くーん!!」
「はい」
「長野くーんが私を言葉で攻め立てる!!」
「・・・・・なんで笑顔なんですか?」
モリクミがニタァと笑っていて怖さの凄みが増していた。
俺、モリクミの喜ぶことでも言っているのか?
「そんな鬼畜な長野くーんもいい!!で、松永くーんもそんな風に攻められてるの?」
おい。
「モリクミ、顔やばいから温泉行ってちょっと直そうよ」
お富さんが提案した。
そうだ、日帰りの温泉が開いている時間だ。
「おぅ、ちょっと汗流そうか。暑いし。風呂浴びてからキャンプ場向かう?」
俺の提案に一同は頷いた。
モリクミは化粧直しを隣でしていたが手を止めた。
「あたしの努力台無し」
カッパにならなければそんな努力もせずにすんだだろうが。
以前、松永と訪れた日帰り温泉のある宿に向かう。
夜の時間帯は宿泊客のみだけだが昼間とかは日帰り客も入れるところだった。
「松永、家族風呂に俺たち行こうか」
「なんで?」
「こいつらおるけん、二人で入ろう」
こいつらとはもちろん鎌田、児玉、吉野のことだ。松永の裸を見せるわけにはいかん。
「なんで?別にみんなと一緒で構わないけど。お金が勿体無い。家族風呂高い」
「俺が払うけんいい」
松永はため息をつく。
「これからもそうしていくつもりなん?」
「おぅ」
「バカか。お金が勿体無い」
「俺が払うけんいいやん!!」
「そういう問題じゃない。ずっとそんなことしていくのか、って言ってる」
車内でモリクミを真ん中に挟み口論になる。
お前はなんで俺の気持ちが分からんの?
「あーん、あたしを挟んで喧嘩が始まって、もうどうしよう。やーん」
「松永君別にいいんじゃない?そのうち、治るよ」
「治るってなんか(なんだよ)?俺が病気みたいに言うなや・・・・・鎌やん」
「いや、恋愛したての恋人同士だから長野君そう思っちゃうんでしょ。独占欲強いなあ」
「それにしたって気にしすぎよ、長野君。松永君もそれじゃ窮屈だわ」
「お富ー、いいじゃなーい。長野君も二人きりで入りたいんだよねー」
「おぉ、モリクミたまにはいいことを言う」
車内で家族風呂賛成派と反対派で分かれた。
鎌田、モリクミ、俺は賛成派。松永、お富さん、児玉、吉野は反対派
結局、討論は宿に着いても決着を見なかった。
その状況に松永は今回だけだよ?と一声をかけ、全員が納得した。
松永が言うなら、ということで誰もその後は何も言わなかった。
俺と松永だけが家族風呂を借りて入る。
「なんであんな風にみんながおる前で言うん?」
松永が俺の背中をタオルでこすりながら尋ねた。
「松永の裸見られたくないけん」
「僕たちだけ特別な存在ではないんよ?みんなと行動しとるのに僕たちだけ別行動しておかしかろう?僕は別に裸見られてもなんも思わんよ?」
「俺が嫌だってーの」
「はぁー・・・・・・僕の裸見たところで誰もなんも思わんよ」
「お前が鈍感なだけたい」
「は?」
松永の方を向く。
すれ違う女も男も松永を見る。そのたびに気持ちがざわつく。
前にモリクミやお富さんにたしなめられて自重しているが、ほんとうは松永を部屋に鎖でつないで誰の目にも映らないように自分だけのものにしたい。
そんな気持ちを松永に伝えた。
「長野、それ違う」
「違う?」
「うん、見られてたとしてもそれは珍しいからであって性的対象として見てるんじゃないと思う。僕の外見珍しいからでしょ。僕自身でもそう思うもん、この髪の色とかこの白い肌とか」
松永は指先で濡れた自分の髪の毛を引っ張る。
上目づかいで太陽に照らされている金髪とも明るい栗色とも取れる髪を松永は見て、両手で自分の真っ白な両肩を触る。
「違う」
「違うくないよ。長野」
裸の松永が俺の首に腕をからめる。
「僕のこと信じられん?」
「いや」
「たとえ、そんな目で見られていたと仮定しても、なんもないよ。僕がこんなに長野のこと好いとると思うとるのにまだ足りん?」
松永の体、柔らかい、スベスベしとる。
耳元でささやく松永の言葉は催眠術にかけられたみたいに落ち着く。
「俺も好いとる」
「だったらなんも問題なかじゃないか。心配なんかいらん」
松永が体を離して俺の顔を見つめる。
初めて会った時から気付いていたが松永の黒目の部分もよく見ると茶色い。
吸いこまれそうに大きくて不思議な色だなあと思う。
「それに長野の方がもてると思うんよね。長野、僕ばっか見てるから気付いとらんだけで。ま、僕は・・・・・って、うわっ!!何しとるんか!?」
とりあえず松永のナニを握ってみた。
「だって俺のほら」
「お・お前」
「松永これどげんしよう。フルでおっ勃ってしまって静まってくれんのだが。松永も同じにしようよー」
「バカかっ!!お前!!これを狙って家族風呂に二人じゃなかろうな!?」
ばれたか。
でも、誰にも見せたくないのは本当だ。そしてイチャイチャしたいのも本当だ。
結局は何もさせてくれなかったんだが。思いっきりまた頬をつねられた。
風呂を上がって、松永と宿の桟敷(さじき)に向かう。
そこでみんなと合流することになっている。
「あー、やっと来たー。湯上り姿の二人も素敵。って、あらーん?長野君ほっぺが片方えらく赤くない?虫にでも刺された?」
「気にするな。喉渇いた」
「すぐキャンプ場行って飲んだくれちゃわない?お腹も空いたし」
お富さんもお酒が好きなようでアルコールを欲しているようだ。
まだ夕方と言うまでもない時間だったがそのままキャンプ場に向かう。
テントを張るのは後回しにして、先にバーベキューが出来るように、河原のそばで火を焚いた。
「ここのキャンプ場珍しいね。直火(じかび)は禁止のところが多いんだけどここはいいんだね」
「直火?」
松永が木材を児玉に渡しながら尋ねていた。
「うん、こうやって直接地面や石の上で火を起こすのはいけないキャンプ場が多いんだよ」
「児玉先輩詳しいですね」
「よく一人で山とか川行ってキャンプしてるから」
児玉は目立たない存在だが今回のキャンプでは大活躍だった。
児玉が大きな石を組んで簡単な暖炉みたいなのを作りその中に火をくべる。
石の暖炉の上に網を置き、モリクミはどこで買ってきたのかスルメを焼いていた。
「誰かマヨネーズっ!!あーん、スルメのいい匂い。鎌田!!チューハイ取って!!」
モリクミ働けよ。そしてなんでまたカッパの格好してるんだよ。
暖炉の回りにビニールシートを敷き、みんな楽な格好でくつろぎながら酒を飲んだりつまみみたいなものを食べていた。
松永は酒が飲めないので、コンビニで買って来ていたミルクティーを飲みながらモリクミのスルメを裏返してあげたり、他の連中のエサがなかったら買って来ていた材料を焼いて与えるのに忙しくしていた。
モリクミはスルメに飽きたのだろう。スルメを手に持ってどこかに歩いて行く。
「カッパだー!!」
「うぉ、カッパがスルメ持って現れたっ!!」
俺たちと同じくキャンプに来ている近くの団体からそんな声が聞こえる。
モリクミは俺たちより後に来た家族連れや、友達同士でキャンプに来ている人達のところに行っては物々交換で食べ物をせしめていた。
「やーん。おいしそう。スルメと交換しません?」
モリクミ、スルメごときでステーキ肉せしめて来んじゃねーよ。。。。。
お富さんも写真撮影します、とか言って食べ物せしめるモリクミのフォローしてるみたいになってるやないか。
恐ろしい女どもだな。
児玉は俺たちがそんなことをしている間に一人でテントを張る作業に取り掛かっていた。
鎌田はもう酔っている。今にも眠りそうだ。
吉野はキャンプ場に来ている人間たちを観察していた。タイプの男でもいたのか?目が男ばかり追っている。しかも中年の男じゃないか。。。お前の男の趣味はそういうのなんか。
松永はみんなが勝手に動き出して解放されたのか、河原の水辺にしゃがみ込んで河原の水を触ったり石をどけてみたりしている。
「松永ー、川の中入る時はサンダル履いて入りーよー。底の石で足切ってしまうかもしれんけんね」
「そうなん?分かった」
離れた所から松永に向かって声をかける。
ビニールシートに横になってビールを飲みながら河原で一人遊びをしている松永を見ていた。
電車の中でもそうだが、松永にはこういう子供っぽいところがあった。
車窓から見える風景を食い入るように見ていたり、今目の前で河原で一人遊びをしている姿。
子供のように熱心に集中している姿を見ると、子供の時そういう遊びをして来なかったんかなあと思う。松永の様子を見てそう思った。
そう言えば松永の小さい頃の話とか何も聞いたことがない。
夜はテントで二人っきりだから小さい頃の話とか聞いてみよう。
お互いどんな子供だったんだろう。
松永、小さい頃はもっと可愛かったんやろうなあ。その頃の松永見てみたいなあ。
今度写真持って来てないか聞いてみよう。持って来てないなら実家に帰った時に東京に持って来てもらおう。
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