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守るべきもの
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朝起きるともう松永は起きて朝食を作っていた。
「松永早いね、おはよ」
「おはよ」
松永は廊下から顔をのぞかせてベッドの上の俺を見る。
「すぐご飯出来るよ」
「おぅ」
二人でご飯を食べてゆっくりした後、出かける準備をする。
今日のダブルデートの約束は11時でランチをしてどこかに出かける予定だ。
「松永、こっちの服着りぃー」
「派手過ぎる」
俺から見ても、ふつーの人から見ても全く派手じゃない。どうしてそういう感想になるんだ。
明るい青のシャツと白のタイトなパンツをチョイスして渡す。
「下のパンツ透けないかな。。。」
「透けないよ。シャツ外に出してるから問題ない」
いつもの黒か白のシャツを着ようとしているのを止め、俺が買った服を渡す。
バイトの初給料の時に、二人で出掛けた時、プレゼントで買った服だ。
松永は俺に従って服を着る。
おぅ、やはり明るい色が似合う。爽やかだ。
松永は落ち着かない素振りだが、それを着て行くことに決めたようだ。
俺はTシャツの上にチェックのシャツを羽織ってジーパンにする。
「長野、似合うね」
「そう?」
「うん。イケメンイケメン」
松永をとりあえず抱きしめてキスをしておいた。
中央線、中央特快で新宿へ。
西八王子駅は終電の高尾駅一歩手前ということもあり、座席に座れた。
新宿に近づくにつれ、人が増え混んでくる。
松永は絶対拒絶を発動している。
二人に会う時もこのままなんじゃないだろうか。。。。と不安ではあったが折角の二人の誘いだし、場所の指定に文句は言わなかった。
ランチの場所も決めてくれているらしい。
新宿に降り立ち、待ち合わせの場所へ。
先に戸田と奈々子は着いていてた。
「長野ー。こっちー」
「長野くーん」
二人が笑顔で待っている。
「いた。あれ」
「うん」
驚いたことに松永は絶対拒絶を解いた。
今まで空虚だった目に光が宿る。全身から出していた、寄るな、近寄るなの変な雰囲気が消え、俺の前や園芸部でしか見せないいつもの松永に変化した。
いつも俺にだけ見せる笑顔で二人に近寄る。
「ごめん、待った?」
「いいや、ちょうど着いたとこ。松永君?初めまして、戸田です」
「初めまして、松永です」
こんなに人の多い場所で絶対拒絶を解くのを見るのは初めてかもしれない。
奈々子は松永を見て
「写メで見るよりもほんとに・・・・」
と言った後、言葉をのんでいた。
「イケメンやろ?」
と自慢気に俺がつなげる。
「うんうん」
松永は恥ずかしそうにありがとうございます、とお礼を言う。
松永の謙遜ではなく、お礼を言うクセはすごく好きだ。
「お腹空いてるよね?ランチ食べ行こう。店決めてるから」
戸田が俺と松永に向かって言う。
4人で落ち着いた感じの洋食の店に入る。
日曜日の昼間だから人が多いかと思ったが、長居しても問題ない位落ち着いていて、いい雰囲気の店だった。
4人で席に着いて、メニューを見て注文した後、戸田と奈々子は松永の顔をマジマジと見つめていた。
「何か顔についていますか?」
松永が笑みを浮かべて二人に聞く。
うぉ!!松永からしゃべりかけた!!
「松永君ほんとに綺麗な顔だなあ」
「うん、お父さんとお母さん美男美女でしょ?」
「どうでしょう」
松永は首を傾ける。
戸田と奈々子の二人は松永の魅惑に落ちた。
絶対拒絶さえ解けば、本人は気付いてないが人を魅了する魅力がある。
生まれ持った天然のものだろう。松永はそれすら一括で拒絶しているが。
「かわいかろう?」
俺は戸田と奈々子の二人に聞く。二人は黙って頷く。
その後は松永に対する質問攻めだった。松永は一つ一つに真面目に受け答える。
「長野君のどこが好きになったの?」
奈々子が松永に聞く。
「優しい。僕のそばにいてくれるから」
そう松永は即答した。
俺はその言葉を聞いて何かを思い出そうとしていた。
あれ?まただ。
なんだ?前にも何かを思い出そうとして思い出せなかった。
俺が眠りに落ちる時に松永が泣いていて何か俺に言って俺が何かを答えたような。
思い出せない。
「長野ー。どうした?」
「あ、いや」
戸田に声をかけられ思考から現実に戻る。
ある程度お互いの話をした後、戸田と奈々子は松永と携帯の番号とメアド交換をしていた。
松永は嫌がることもなくそれを登録する。
松永の携帯の中の登録って園芸部とお富さんと鎌田と吉野と俺位しかいないんじゃないだろうか。家族からの電話が来ているのも聞いたことないな、そう言えば。
「松永君って園芸部?って言うサークル入ってるんだよね?」
戸田に言われて松永が俺を見る。
そんなことまでしゃべっとる?
と目が言っている。
「はい」
松永が二人に向き直って答える。
「文化祭あるんだよね?私たちも遊びに行こうかなー。長野君と松永君いるんでしょう?」
「おぅ。一応俺も手伝いに行く予定」
「やめておいた方が」
「なんで?なんでー?戸田と一緒に遊び絶対行くー」
「あ、いや・・・・あの、すごく迷惑かけるかもなので」
「迷惑?俺たちがかけるんじゃなく?」
「ええ・・・・」
モリクミとかのことを言っているのだろう、今まで笑顔だった松永が乱れた。
確かにモリクミと対面したら何が起こるか分からんからなあ。
「いやー、つまらんと思うよ」
俺がフォローしたが戸田と奈々子は絶対遊び行くー!!と言って聞かない。
しょうがない、こればっかりは止められそうにないので困った顔をしている松永を見て軽く頷く。心配しなくてよかよ、と伝わるように。
その後、映画を見てお茶をして二人とは別れた。
「映画館来るの初めて」
と言う松永の言葉に俺も驚いたが二人はもっと驚いていた。
俺の知らない松永のことがまだあるなあ、と気付く一日だった。
帰りの中央線の電車は混んでいた。俺たちと同じく今から帰る乗客で満員だった。
松永をドア際に避難させて俺の体で松永を覆うように守る。
「混んでるね」
「おぅ、松永きつくない?」
「大丈夫、長野大丈夫?」
「おぅ」
松永の顔が胸にある。電車の揺れで押しつぶされないように俺は踏ん張る。
松永の手がぎゅっと俺のシャツの裾を握っている。
なんだか気分が悪そうだ。
「大丈夫か?」
「うん、もうすぐ家だし」
そう言う松永の顔は疲れていた。
家に到着して、松永をベッドに寝かせる。
松永は熱を出していた。
「松永、無理してたんやないと?」
「ううん、楽しかった。いい人たちだった。映画館も初めて行けたし楽しかった」
松永は笑顔で答える。
「人ごみで少し疲れただけやけん。寝たら治る治る。心配かけてごめん」
「そんなんよかよ、疲れたやろう?寝よう」
二人で同じベッドに寝る。
熱い松永の体を抱き寄せてキスを頬とかおでこにする。
松永は繊細に出来てるんやなあ、こんなんで生きていけるんだろうか。
熱で熱い体を抱きしめながら思う。
守ってあげたい。
ぐったりしている松永を掻(か)き抱いて強く抱きしめる。
「どうしたん?長野?」
いつもとは違う抱きしめる強さに朦朧としている松永が尋ねる。
「疲れたやろ、眠りー」
「うん」
松永の細い体と甘い香り。
なんか、消えてしまいそうに感じる。
存在自体が松永は儚(はかな)い。
このまま消えちゃうんじゃないか、と思った。
守りたいものが出来ると人は強くなる、とよく言うが俺が守りたいものはこいつだ。
松永は守らんでいい、と言って頬をつねるかもだけど。
俺はこれまでの二人の時間の中で気付いていた。
俺の体と心に比べたらお前は壊れやすくてもろい。
松永は何も感じていないというようにふるまうけれど。
だから、俺が守るよ。そう思いながら眠りについた。
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