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再び土手、松永の覚悟
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ひどいクリスマスだ。
俺は松永の部屋がバカ共の乱痴気騒ぎの巣窟になってしまっているのに怒り心頭だった。
「あーん、松永くーんおいしい。松永くーん料理上手ねー!!」
モリクミィイイ!!お前がどうせ元凶だろう!!
「ありがとうございます。あの、そろそろ児玉先輩の口につけられている装身具みたいなの取ってあげても。ご飯食べれないんじゃ?」
「児玉ー。ご飯食べたいー?」
床に縛られて転がっているトナカイ姿の児玉に鎌田が尋ねる。
「ンー、ンー!!」
「何言ってるか分からないやー」
鎌田はまた鍋をつつく。
見かねた松永が児玉の口の猿轡(さるぐつわ)を外そうとしている。
「松永君ありがとう」
「・・・・どういたしまして。なんでこんなことに?」
松永、そんなドM放っとけ。
俺、この日の為にプレゼントも買って準備してるんぞ。
こいつらのせいで出すタイミングもムードもねえじゃねえか!!
そうしているうちに酒に酔って一人、また一人と倒れて行く。
児玉は飲んでいなかったが、また縛られて床に倒れて寝ているようだ。
お前それでよく眠れるな。
起きているのは俺と松永だけになった。
「松永、そんな布団かけてやんなくていいよ」
「風邪ひくかもしらんし」
「松永。外出よっか」
「なんで?」
「夜風当たりに行こう」
「そうだね、換気悪くて少し外の空気吸いたいかな。コンビニでお茶も買いたいし」
松永がコートを羽織って財布を持つ。
俺もジャンパーを着て帽子を被って外に出る準備をする。
プレゼントの箱も松永に見られないようにジャンパーのポケットに忍ばせた。
「あれ。長野、そっちコンビニじゃないよ」
「ちょっと散歩しよう」
「うん」
怪訝な顔の松永の手を引っ張る。
二人で川の方に向かう。
初めて二人でキスをした場所を目指した。
「川行くの?」
「おぅ」
川への道と気付いた松永の首にマフラーを巻いてあげた。
「長野寒くない?」
「寒くないよ」
街はクリスマスの熱狂から醒めて静かになっていた。
あの時の土手をまずは俺が走って駆けあがる。
「おいで」
「うん」
コートを手に持って松永が俺めがけて駆けて来る。またあの時みたいに腕と松永の体を掴んで抱き止める。
「暗いけん少し位こうしててもいいやろう?」
「さすがにこんな時間だし人いないしね」
しばらく抱きしめ合う。
あの時と同じいつもの松永の甘い香り。
あの時と違うのはもう俺を松永が拒まなくなったということだ。
土手の川側のスロープを降りて川沿いを歩く。
「なんか時間が経つの早かったね」
「おぅ」
「長野は身長伸びたね。いつまで成長するん?」
松永がおかしそうに笑う。
俺は180cm位だったはずだがまた身長が高くなっているらしい。
松永がちょっと小さく感じる時があったからそうなのかもしれない。
奥多摩の時も言われたし、思ったが隣にいつもいる松永が言うからそうなんだろう。
「人いないなあ」
「こんな深夜だし、明りも対岸の建物だけだから一人じゃ怖いと思うよ」
「松永怖い?」
「長野おるし」
「そっか」
キスをした辺りに到着した。
「あん時、僕、体きつく締めあげられて痛かったー・・・・」
「ごめんごめん。逃がさねー!!って必死やったけん」
二人で笑った。
「松永」
「うん?」
「メリークリスマス」
持って来た箱を渡す。
「見ていい?」
「おぅ」
松永が丁寧に箱の包装紙をはがしていく。
松永が箱からペンダントを取り出して手に持った。
「僕ブランドとか良く分からんけどこれ高かったんじゃないん?高そうな箱・・・」
「いんやー?俺とお揃い。ほら」
俺の胸元につけているペンダントを見せる。
「これくっつけると一つになる」
「ほんとだ」
松永のペンダントとくっつけると一つのハートが出来た。
「これもらっていいの?」
「当たり前やん」
「ありがとう」
松永が嬉しそうにペンダントを両手の掌に乗せて見つめている。
松永、そんなに嬉しい?俺も嬉しい。
「ほら、松永つけな」
「もったいないけん。つけれん」
「なん言いよっとって。貸して」
後を向かせて松永にペンダントを付ける。
「ありがとう」
そう笑顔で言う松永を抱きしめる。
そしてあの日のようにキスをした。
今度は優しく抱きしめた。
「そろそろ帰ろう。松永寒いやろ」
「ううん、大丈夫だよ。あったかい。長野の体あったかいけんね」
二人で手をからめて、頬を寄せていたけどこれ以上寒い中に松永をいさせるわけにもいかないので部屋に戻った。
「あーん、長野くーん、松永くーん!!どこ行ってたのぉおお!寂しかったよぉおお!!」
酔っぱらってメイクもズタボロ、髪もグシャグシャのモリクミがドアを開けるなり突進して来た。
「おい、こら。松永にタックルしようとするな。松永が吹っ飛ぶだろうが」
モリクミの前に立ちはだかってモリクミを制止した。
背後で松永が「ハハハ・・・・」と乾いた笑いを出していた。いきなり突進して来たから驚いただろう。
「松永くーん!!これー!!」
酔っぱらったモリクミがバッグから汚らしい本?ノート?みたいなのを松永に手渡すとそのまままた寝てしまった。
松永は受け取ったそれを読んでいた。
「何が書いてあるん?」
「遺書」
「おぉ?」
「モリクミ先輩はこれを読んだんやね・・・・・なるほど」
松永はパラパラと読み進めて、それを大事そうに机の中から白い紙を取り出し、その紙で包むとバッグにしまった。
「なんそれ?」
「うーん。今はまだ、うーん」
松永は顎に手を当てて、ロダンの考える人の銅像のようなポーズを取っていた。
考え事をする時の松永のクセだ。
このポーズをしている時は話かけても上の空なのは知っていたから俺は松永が戻って来るのを待った。
「長野」
「おぅ?」
姿勢を解いた松永が俺に向き直る。
「好きだよ」
「おぉ!?いきなりどした!?」
「いや、なんとなく。プレゼントはみんなが帰って静かになってから渡すね」
「おぅ!!俺も好きー!!松永んこと好きー!!」
「そう」
松永は難しそうな顔をしていたがフフッと笑った。
その日から松永は何かと戦い始めていたようだ。
俺は最後ら辺でその話の顛末を知ったのだが。
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