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モリクミの宣戦布告
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園芸部にモリクミと僕はいた。
冬休みで学校には人がほとんどいない。
モリクミに分かったことを話す。
「あーん、松永くーん!!一人でそこまで!!ありがとー!!」
「いえ。でも冬休みで佐伯さんも、また当時の方で唯一聞けそうな須田教授もいらっしゃいません。須田教授は深いところまでは知らないかもですが、何か糸口にはなるかも。解決するとしても年越しになると思います」
「あらーん、二人と連絡は取れない感じー?」
「はい、連絡先を聞いていませんでした。学生部を通してでないと二人と連絡は取れません」
「やつら学生部の職員はちゃんとした理由がないと教授と連絡を取ろうとしないわねー」
「どうしましょうか」
「そうねー。鍋でも作りましょうか」
「はい?」
モリクミはいつもの鍋とカセットコンロを取り出し、まな板と包丁を机の上に出した。
「何故鍋なんですか?」
「えー、お腹空いたしー」
「・・・・・・・」
モリクミが鍋を作っている。
鍋が煮える間、モリクミは部室に今まで着て来たであろう衣装をハンガーでかけ出した。
「モリクミ先輩?」
「冬はねー、乾燥するから部屋干しするといい感じに乾くし虫干しになるのよー。繊細な素材も多いから洗って外で乾かすと生地が傷むものもあるのー」
「・・・・・・・そうですか」
今までのモリクミが着て来たであろう歴代の着ぐるみや衣装が部室中に展示されるようにかけられていく。
鍋の蒸気で乾かないんじゃ。。。。。。いいんだろうか。
「はっ!?」
「うわ!!なんですか!?」
モリクミの大きな声に僕はびっくりした。
「学生はいないけど、サークル関係の連中いるわよね?」
「はい、他のサークルもいくつか来てるみたいです」
「鍋届けに行きましょ」
「え?」
「鍋届けるついでに探り入れて来ましょー!!」
「モリクミ先輩が何を言っているのか、僕全然理解出来ないんですが」
モリクミが言うにはこうだ。
鍋を持ってサークル連合に行こう、そして鍋を差しだしている間に資料室とやらに勢いでなだれ込めないか、と。
どうせ冬休みに来てるやつらなんて下っ端で事情を知らないだろうからすんなり入れてくれるんじゃないだろうか、と。
「うまくいくでしょうか・・・・」
「分からないわーん。取りあえず敵陣を見に行きましょー。資料室とやらもどこか検討をつけたいしー」
そう言いながら、以前鎌田が演劇部を襲撃した時に着ていたと言っていたナマハゲの衣装だろう、それを着ていた。お手製リアル包丁もどきまで持っていて怖い。
「さて、鍋も出来たし行きましょうか。松永くーん、お箸とお椀をそこのミニリヤカーに乗せてー」
園芸部の手押しミニリヤカーに鍋とカセットコンロとお椀とお箸を乗せて僕たちはサークル連合の部屋に向かった。
サークル連合の部屋の前に立つ。
数名の人の気配がした。
「いるわね」
「いますね」
「松永くーん、準備おーけー?」
「何の準備ですか?」
「あーん、あたしの演技に合わせてくれればいいわー」
「はぁ・・・・・」
モリクミが勢いよくドアを開けた。
ノックをしないんだ、と僕は悠長なことを考えていた。
「悪ぃいい子はいねぇえええがああああああ!!」
「・・・・・・・え・園芸部です。こんにちは」
サークル連合の人たちは僕たちを見てポカーンとしていた。
すかさず僕がサークル名を名乗った。これ演技いるんだろうか?
「園芸部さん、どうしました!?」
「あ、いや、その、鍋でもと思って」
「悪ぃいい子はいねぇええええがああああああ!!鍋食えやごるああああああ!!」
会話が噛み合っていない。
察してくれたのか、
「ああ、鍋持って来てくれたんですね。中へどうぞ」
とサークル連合の人間が言う。
なんだ、このテンションの違いは。
サークル連合はそれぞれの公認サークルから選出された人間が務めていたりする。
その時部屋にいたのはほとんど体育会系のサークル、部活の人間たちで構成されていた。
角刈り、学生服といった時代錯誤な感じの融通が利かなそうな険しい表情の人間もいた。
モリクミが素早くこっちを見て舌打ちして小声で言う。
「チィ!!ここに今いるの下っ端どころか委員長とか執行委員クラスの連中だわ!!クソッ!!」
つまり、サークル連合の中枢人物たち、不正が今でも行われているとしたら知っている人物たちということだろう。
モリクミは僕に目配せをすると、前に向き直る。
「あらーん、どうもー。いつもお仕事御苦労様でーす。鍋でもどうぞー」
「園芸部さん鍋ありがとうございます。ちょうど何か食べようと買い出しに行くとこだったんですよ。園芸部さんも中にどうぞどうぞ」
笑顔で部屋に迎えられる。
「あ、はーい。松永くーん、何か鍋に気絶させられるようなもの入れてなかったかしらー?食べたら眠っちゃうようなー」
「入れてないですね・・・・・」
サークル連合の人たちは冗談と思って笑っているが、モリクミは「一服毒か何かを盛れないかしら?」と本気で僕に遠まわしに聞いていたんだと思う。
サークル連合の部屋の机について、鍋を置き、お椀やお箸を渡す。
「園芸部さんと我がサ連が出来たのは同時期だから兄弟みたいなものですねー」
「あーん、そうですねー。出来の悪い兄弟みたいな感じでー」
おい。
サークル連合の方が都合よく出来の悪いのが僕たち園芸部と勘違いしているみたいだから良かったものの、絶対サークル連合に今喧嘩を吹っ掛けただろう。
モリクミは部屋の中に視線をめぐらしていた。
資料室がどこにあるのか探っているのだろう。
「あらーん、あんなところにも扉がー。あの部屋なんですー!?」
「ああ、あれですか。今までのサ連の活動資料や、サークル関係の資料を集めた部屋ですね」
「そうなんですかー」
あの部屋か。鍵がかけられるタイプのドアだ。鍵がかかっているだろう。
「あーん、楽しそうー。入ってもいいですかー?」
ええっ!?直球!?
「すいません、サ連でも一部の人間以外入れないしきたりなんですよ。部外者の方はもちろんのこと」
「やーん、何かそんなに大事なお宝でもあるんですかーん?」
「いや、そういうわけではないのです。昔からの風習ですね」
「あらーん。そんな風習なんで生まれたのかしらーん。何かやばいものでもあるんですかーん?」
部屋の空気が変わった。
モリクミと、この人が委員長だろう。
二人が笑顔で対峙しているが二人の間の空気が張り詰めていた。
「園芸部さん、どういう意味ですか?」
「えー?別にー?何もないですわー。あーん、それより鍋どうぞー」
部屋の中が無言になっていた。
居たたまれない空気が流れている。
モリクミはそんな空気を全く気にせずお椀に鍋をよそいながら配って行く。
「いろいろと忙しいでしょうし、どうぞーどうぞー。大変ねー、何かいろいろされてるみたいだし」
「どういう意味ですかね!?」
「えー?そのままの意味ですけどー!?大変ねーと思って」
モリクミ、お願いもうやめてくれ。
この人たち警戒してる・・・・・・。
この人たちもサークル連合の不正を知ってる、もしくは今でも行われてるのは今の空気で分かったからこれ以上刺激しないで。
その後、鍋をサークル連合で食べたが生きた心地がしなかった。
僕は途中から拒絶をしていたがモリクミと委員長の会話が怖ろしかった。
部屋を出てから
「モリクミ先輩!!どうしてあんなことを!?」
と聞くと、
「やーん、だって腹立っちゃったんだものー。あいつら今でも不正してる反応じゃなーい。サークル連合の中で脈々とそれを受け継いで来たんでしょー!?」
「そうだと思いますけど宣戦布告したようなものなんですよ!?僕たちが気付いているかもしれないと勘付かれちゃったじゃないですか!!」
「あーん、松永くーん。返り打ちにしてあげましょー。あたし、あいつら嫌いだわー。急いで対策を練りましょー。やつら武闘派な連中だからすぐに仕掛けて来ると思うわーん」
「ええっ!?」
「いい機会だわ!!あいつらを叩きのめす!!」
モリクミ先輩の何かを刺激したんだろう。
これはもう避けられない。
サークル連合と戦争になるだろう。
サークル連合も園芸部を警戒して標的にして来るに違いない。
帰り際の委員長の言葉。
「園芸部さん、あまり余計な活動はしないようにしてください」
と言った時の顔は脅しだった。
「余計な活動ってー!?」
とモリクミはガン睨みで応戦していたが。手に持つ包丁もどきを突き付けながら。
モリクミ先輩は園芸部に戻ると部屋干ししていた衣装を片づけながら、携帯で電話をしまくっていた。何かをやらかす準備だろう。
何をやらかすんだ・・・・・・。
いきなりの急展開と、今までの悟られないようにしていた僕の努力は鍋一つで打ち破られてしまって、茫然としていた。
う・うーん。これでまたやりにくくなったんじゃないだろうか。
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