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サークル連合の逆襲
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冬休みが終わり大学は始まった。
長野も戻って来た。
試験はあるが普段の日常が戻って来た。。。。。
と、思ったのは園芸部の部室に到着するまでのことだった。
学校に到着してすぐに園芸部の部室に向かう。
園芸部の部室の扉に紙が挟まっていた。
サークル連合からの通達だった。
サークル連合規約違反で園芸部の公認を取り消す委員会の招集状だった。
「これって・・・・」
それを見た僕はあまりにも早いサークル連合の動きにモリクミに連絡を取った。
「あらーん。罪状は?」
「文化祭における無認可の活動と、それとその活動に関する金銭の授与ですね・・・」
「今さら文化祭のこと言って来たかー。あの人生占いにいちゃもんつけてきたわけね」
「はい。公認を取り消すということは」
「この部室の使用も出来なくなる。そして非公認サークルになるということは全ての行事において不認可、またそれ以上のこともしてくるでしょうね。言い訳をする場はいつってー?」
「招集は5日後です」
「5日か。。。。短いわね。やーん。それまでになんとか悪くても刺し違えるだけの準備を!!」
「はい」
携帯電話を切った。もう時間がない。
須田教授の教授室に向かう。
時間がない。迷ったがこの二人には話をした。
「そんなことになっているの!?」
佐伯さんは驚く。
「そういう経緯があったのは私も知らなかった。申し訳ないことをした」
須田教授はノートを読み後悔の念をにじませた。
「須田教授、佐伯さん。関わらなくてもいいです。読ませてしまって今さらですが。それぞれの立場があると思います。ただ力を貸して頂きたいです。津島先輩となんとか連絡を取りたいんです。そしてこれは自分たちで解決をします。お二人には一切何かが・・・・・」
そこまで言った時に須田教授が遮った。
「ふぁふぁ。もう老い先短い。長いこと教壇に居過ぎた、後続に席を譲る年月なのかもしれない。私もその話に乗りたいと思うねぇ」
いたずらっぽく須田教授が笑う。
「ですが、先生の立場があります」
「そんなもの、もういらないよ。地獄にまで名誉教授と言う肩書きなんぞ持って行ったところで閻魔様が何か情状酌量でもしてくれるというのかね?ふぁふぁ。佐伯君、君はまだ若いし優秀だから他の研究室でも引く手あまただろう」
「教授。私も津島先輩の後輩の身、須田教授の助手です。この件に私も乗ります!!」
大学側と戦うことになることを意味する二人の意志は嬉しいが二人の行く末を案じた。
苦渋の顔つきをしていた僕に須田教授は優しく言った。
「まぁ、松永君。気に病まんでよい。これでも長いこと生きて来て、ずるいこともたくさんして来ている。サークル連合のヒヨっ子どもの魂胆なんぞ小さき、小さき。任せておきなさい。私らのことは心配せんでもよい。どちらとも何事もなかったように場を作る術も考えている」
須田教授がふぁふぁと笑いながら佐伯さんに指図をしていた。
「佐伯君、サークル活動費の資料を集めてくれませんか。また津島君への連絡はどうなっているかね?」
「はい。津島先輩とつながる人物に今だ当たらずに現在来ています」
「津島君のゼミは野田教授のゼミだったね?」
「はい」
「私から野田教授のところに出向こう。あれも私の教え子だし、彼にも動いてもらおう。津島君の連絡は私が受け持つ。佐伯君はサークル連合のお金の流れとサークル活動費の資料を集めてください」
「分かりました」
「松永君」
「はい」
「君は最期の願いを叶えてやって欲しい。探せますか?」
迷いはなかった。
「必ず」
そう答えたら須田教授はニコッと笑った。
部室に戻るとモリクミが来ていた。
モリクミ以外に知らない人間も数名いる。
「あーん、松永くーん。お帰りー。どうだったーん?」
「はい、須田教授と佐伯さんが全面協力になりました」
経緯を話す。
「あらーん、さすが仏の須田と異名を取るだけはあるー。そっちの不正の資料探しはお二人に任せてー。サークル連合の内部の切り崩しはあたしたちで頑張りましょー」
モリクミは肉マンを頬張りながらしゃべっていた。
緊張感ないなあ・・・・・。
園芸部潰される5日前なんだけど。。。。時間無いのに。
「園芸部大丈夫か。。。。」
「おいおい、ほんと大丈夫なのかよ!?」
モリクミに紹介された演劇部部長とラクロス部部長がモリクミに言う。
二つの部はやはり津島先輩が生んだサークルで園芸部とは兄弟になるらしい。
それだけに他サークルと違って交流と結束は強いようだ。
「今回、二つのサークルにもお力を借りたいのー。津島先輩の作ったサークル連合がちょーっとお痛してるみたいだからーん。兄弟分としてはお灸を据えたいのよねー。力貸してくれるー?」
「お前ら何をしでかしたん?」
「あらーん!!演劇部の部長さーん!!あたしらが何かしでかしたんじゃなくてやつらの方よー!!言えないけど」
「で、俺たち何すればいいの?」
「あーん、ラクロス部部長ー。イケメーンは話が早くていいわー。サークル連合もサークルから選出された烏合の衆。一枚岩ではないわーん。執行委員の連中、人に好かれるタイプの人間じゃないわよねー。内部の仲の悪い決裂分子の人間の交渉に回ってくれるー?期日は委員会までの5日まででお願いー。あたしらにつくように説得してーん。じゃないとあなたたち最悪退学処分かもよー、って脅してー」
「おい・・・・なんだその話は!?それにむちゃくちゃ短いな」
「あーん。今は言えないけどお二人の人脈に期待してますわーん」
「モリクミ、お前何するの?」
「あたしですかー?その日の特別衣装をすぐ作らないといけませんのでー」
「うぉおおい!!」
「園芸部がなくなるかもなんだぞ!?」
「モリクミ先輩・・・・・」
演劇部部長とラクロス部部長、僕から総ツッコミを入れられていたがモリクミ大丈夫だろうか。。。。全然緊張感ないどころか衣装の方が大事なのか。。。。
時間がない。
僕は僕のやるべきことを。
まず図書館に向かう。ノートの彼は当時図書館でバイトをしていた。その痕跡を見つけなければ。
図書館利用者のデータベースから過去の彼の名前を探しだす。
図書館に勤めたということは本を読むことが好きな面もあっただろう。
当時は図書カードの時代だっただろうが、それも少しずつデータベースとして入力しつつ管理しているのは知っていた。運が良ければ彼のデータも入力されているはずだ。
彼の名前を探すところから始めた。
膨大なデータベースの中から彼の借りた本が見つかって行く。
日付、本の題名をメモを取りながら何か分からないか、と探して行く。
読んでいる本に全く脈絡がない。
僕も本を読むがなんとなく違和感を持つ。
読んでいる本の系統がバラバラだ。
読書好きな、なんでも読む人だったらおかしくもないが彼は急に路線の違う本を借りる傾向がある。
これは本を読む人間にしか分からない感覚だろうが知らず知らずに同じ系統の本を読むものだ。違和感がある。
彼が読んでいる本を系統別に分類する。
そしてあることに気付いた。
同じ人物の後に借りている本があるということだ。
苗字は市○○○、女性。
ああ、つながった。
その女性が借りた本を彼がそのすぐ後に借りていたんだろう。
その女性が借りている日付を見ると当時の水曜日だ。
水曜日に必ず現れていたのか。だから水曜日18時に指定したんだな。
彼女が現れる時間に。
ただそこから先はどうしよう?名前も分かった。当時水曜日18時に現れていたのも分かった。
ただ、それからどうする。。。。。僕は迷いだした。
同じ市○○○の名前で最近貸し出しがないか調べたが該当はなかった。
もう何年も前の話だ。もう来てないかもしれない。
大学の卒業者名簿にもその名前はなかった。
つまり・・・・外から借りに来ていた女性か。
近隣の住民の可能性がある。
田中さんにもう一度会う必要がある。
2日後、田中さんの家を訪れた。
女性の名前を告げるとその方の身元が分かった。
今は結婚をされて苗字が変わっているらしい。
妊娠のつわりがひどく、今実家にいるという話を聞けた。
僕はその家の住所を教えてもらい、田中さんから連絡を取ってもらい会うことにした。
玄関先でチャイムを鳴らし、その女性が出て来た時、
「あ・・・」
「あ・・・・」
と二人同時に声を上げた。何回か僕は見ていた。
図書館に来て、僕に何を読んでいるんですか、と声をかけた女性だった。
「いきなりすいません。あの・・・・」
「ええ、あなた大学の図書館のカウンターにいたわね。私あなたが夜遅くまで畑にいたの見かけたの。あそこ、大学のサークルで使っているんでしょう?当時の知り合いと姿がだぶって。彼もよく畑で夜遅くに畑いじってて。図書館のカウンターの仕事もしていたから余計にね」
女性の方から話をしてくれた。田中さんから聞いていたのかもしれない。
長野が帰って来なくて夜遅くまで畑にいた僕の姿を見ていたのだろう。
「知り合いの彼の姿とあなたの姿がだぶってね。つい声をかけてしまったわ」
「そうですか。すいません。今度の水曜日18時に図書館に来てくださいますか?」
「え?」
「当時のように図書館に来て頂きたいです」
言葉では伝えきれなかったがその女性に僕の必死さが伝わったのかもしれない。
「分かったわ」
と答えた。そして笑顔でこう言った。
「私、こっちに戻ってからいつも水曜日18時に来てたわ。だから行くつもりだった」
ああ、この人も過去の始末をつけなければいけない。
何故彼が死んだのか、そしてノートにあった栞と恋文。
委員会まで後、3日。
ちょうど水曜日だ。
それぞれの時が流れ出すまで後3日。
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