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懺悔
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その日は吉野と二丁目に飲みに行く約束をしていた。
松永も誘ったがいつものように断った。
断るのはいつものことで一応松永に来るか聞くのが習慣みたいになっている。
その日飲み屋の店で会う約束をしていたのに吉野は現れなかった。
吉野からメールが届く。
「ごめん。今日行けないや。タイプの男と会う約束が出来てさー。長野一人で飲んで」
「おぅ。うまくやれよ」
返事をして初めて一人で飲んでいた。
店の人間と話をしたり、顔なじみの人間としゃべりながらいつものように酔っぱらう。
いつもだったら悪酔いしている俺に、吉野がたしなめて歯止めをしてくれるのだが、その日はいなくて俺は店の人間と顔なじみの人間たちとで一気飲みなどをしながらベロベロに酔っていた。
その後の記憶がないが起きた時、俺は二丁目のラブホのベッドの上で寝ていた。
隣には店でたまに会って話をしたことがある顔なじみがいた。
俺は青ざめた。
頭が真っ白になった。
ガバっと起きた俺に気付いて相手も起きる。
「ああ、起きた?」
「お・俺なんした!?」
「なん、って。エッチした。そっちから誘って来たのに」
相手は笑いながら話す。
頭がクラクラした。酒のせいだけじゃなかった。
「俺彼氏おる!!」
「知ってるよ。僕も彼氏いるから。知ってるよね」
なんでお前そんなに落ち着いていられるんだ!!
彼氏がお互いいるのになんでこうなってる!!
「二人の内緒にしよ。別にばれないよ」
罪悪感で頭の中がぐちゃぐちゃだった。
裸のままの姿でベッドに二人でいることが嫌で服を着ようとした。
「帰るの?」
答えなかった。
「まだ帰っちゃダメだよ。始発まで時間あるよ」
「帰る」
「ダメだって。ばらすよ?いつも一緒に来てる友達にも。お店の人間にも。もう1回しよう」
「うるさい!!」
「電車ないって。なんでそんなビクついてるの?大丈夫だって。二人だけの秘密だからばれないって」
その後のことはあまり記憶にない。
始発の電車の時間まで結局一緒にいた。
やけくそ的なところもあった。
松永の顔がちらついた。
「また今度。メール送るね」
「お前のメアドも番号も知らんし送るな!!」
「もう、交換してるじゃん。覚えてないの?そっちから教えてよーって言って来たのに」
相手が呆れたように言う。
「でも僕もタイプだし内緒ならばれないよ。またやろう」
そう言ってそいつはラブホを後にした。俺も逃げるようにラブホを離れた。
駅までの道のりの足取りが重かった。
松永に申し訳なくて家の最寄り駅に到着してから、階段のところで頭を抱え込んで座っていた。
松永、ごめんごめんごめん・・・・。
そればかりが頭をグルグル回った。
落ちた気分を奮い立たせて家の道を歩いたが、松永の部屋にいつものように入る勇気がなかった。
俺は自分の部屋の鍵を開けてそっとドアを閉める。
松永寝てるだろうから、そのまま起きないで寝てて欲しい。
今は気が動転していて、会いたくなかった。
俺は部屋に戻ってすぐにシャワーで体をゴシゴシ洗って、眠れずに昼まで起きていた。
そのまま、松永を避けるようにして昼のバイトに行った。
夜帰宅して、松永の部屋に入るかどうか玄関前で迷っているとドアが開いた。
「どうしたの?鍵忘れてた?」
「おぅ・・・・・」
「お腹空いてるよね?ご飯出来てるから」
松永が笑顔で言う。
松永ごめん。そう思いながら、ばれないようにということばかり考えていた。
俺は卑怯だと思う。
「長野、疲れてるだろうからご飯食べて早く眠りー」
「おぅ」
実際眠っていないのもあるが心も体も憔悴しきっていた。
松永は黙々とご飯を食べる俺を置いてキッチンで洗い物をしていた。
松永の顔を見ずにすむことに安堵した。
ご飯を食べて、松永を避けるように風呂に入ってすぐ布団に横になる。
「長野おやすみ」
そう言って松永は電気を消して俺の横に入って背中を向けて寝た。
俺は寝ているフリをした。
お互い背中をむけて寝ていた。
俺は疲れた頭と心の中、もう一度
松永、ごめん。
と懺悔して深い眠りについた。
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