アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
長野の気持ち
-
演劇部の練習場所に向かう。
扉を開けて入って来た俺をジロッと鎌田は睨んだが、俺と気付くといつものふざけた顔つきに戻った。
「よし、いったん休憩ー」
鎌田は俺に寄って来る。
「モリクミから練習してるから見て来いって」
「あー。そうなんだー。休憩にしたからちょっと話しようかー」
「おぅ」
俺と鎌田は稽古部屋を出て、誰もいない小道具部屋に入って、モリクミから渡されたあんころ餅とキナコ餅とジュースを鎌田に渡す。
二人で食べながら話をした。
「長野君。僕が奥多摩で言ったこと覚えてる?」
「おぅ、覚えてる」
「松永君の人生という舞台は・・・・みたいな話」
「おぅ」
「観客だった僕たちすら松永君は追い出して一人舞台に戻っちゃったんだろうねー」
「・・・・・・・・」
「長野君、一緒にいるって言ったじゃないか。ヒーローになるって。なんでヒロインを置いてけぼりにしたんだよ」
「ごめん」
「僕に謝ってもしょうがないよ。松永君待つんだろう?」
「おぅ」
二人無言で餅を食べる。
「今回の劇はね。二人のこと題材にしてるんだ。まだ先の舞台だけど見に来てよ」
「二人?」
「うん。長野君と松永君をイメージして作ったんだ。劇録画して渡すから松永君が戻って来たら見せてあげて。まだ結末とか内容とかは教えてあげないよー。舞台ちゃんと見に来てー。練習風景も見せてあげられないよー。出来てからのお楽しみー」
そう言って鎌田は笑った。
「ああ、そうだ。長野君。松永君から聞いたけどクリスマスプレゼントのペンダントしてるの?」
「おぅ。いつもつけてる」
「そうかー。松永君もいつもつけてたよ。ただそれだけ」
「ありがと」
鎌田の優しさがなんとなく伝わる会話だった。
「須田教授が戻るのは明後日だね。会いに行く?」
「そのつもりだ」
「僕たちも一緒に行こうか?」
「いや、俺だけで行くからいい。みんな忙しいやろ?それに俺一人で行きたい」
「分かった」
そこで俺と鎌田は別れた。
その足で園芸部の部室に向かう。
誰もいない園芸部で松永の日誌を見つけた。
畑の野菜の肥料やら種を蒔いた時期などがこまかに書かれていた。
最後のページに
「ごめんね」
と一言書かれていた。
なんでお前が謝る。俺が謝らないかんやろうが。
こんなに好きだったのにどうして俺こんな風になったんだろ。
松永は全然変わらんかったのに俺が変わってしまってた。
後悔しても後悔しても足りんかった。
もう二丁目にも行かない。
松永見つけたらもう離さない。
松永が嫌だって言っても絶対諦めない。
やっと気付いた。
もう松永のそばを離れない。ずっとそばにいるから。
だから早く会いたい。
どこにいるかは分からないけれど。
お前も今でもそう思ってくれる?
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
100 / 105