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近づいてきた馬の姿に人が乗っているのを確認し「すみませーん!」と声をかけようとしたが、その声は喉から出なかった。
だって
物凄い形相で、こっちに向かって走ってくるものだから。
般若のような顔で近寄ってくる相手は、その形相とは反して天使のような金髪と青い目をしていた。
髪型も、まさに天使!
フルゆわカールを肩より少し上で切っており、馬が走る振動に合わせてフワフワ動いている。
まさに、美少年!ジュル…
と、涎が…。
いや、涎を垂らしている場合じゃない。その美少年が、私に向かって突進してきているのだ。
…鬼のような形相で。
私がアウアウしている間に、美少年は何かを叫んでいた。
何やら
「新手の賊か!」「卵をどうした!」
やら喚いている。
彼の敵意の眼差しは確実に私に向けられている。
何故?
訳がわからないが、敵意はありませんよーと片手をヒラヒラさせ笑ってみると
「この、馬鹿にしたな!」
と逆上させてしまった…。
そのまま側まで来て殴りかかってきそうな雰囲気を醸し出しているくせに、ある一定の距離から近寄ってこなくなった。
だいたい、私を中心に半径5mぐらいの所かな?
どうしてだろう…と考えていると向こうが痺れを切らしたのか馬を一歩私に近づけようと動いた。
その瞬間馬が悲鳴をあげ、仰け反った。
その拍子に美少年は馬の背中から投げ出され、宙をまった。
「え…ちょ危な!」
危ない!っと叫ぼうとした私は、彼が見事に身体をひねり地面に着地した事によって「おー…」と、感嘆の声へとかわった。
「チッ…やはり瘴気が…」
今きた道を戻って行く馬を見つめながら、美少年が苦々しく言い放った。
おおっと…最近私はその言葉を聞いた気がしますよ。最近というか、ついさっきにね。
あー、もう何か嫌な予感しかしません。
「貴様…そいつをどうするつもりだ?」
「えっと…そいつとは、どいつの事でしょうか?」
てへぺろ、っと音がつきそうなほど私は愛想笑いをしてみた。
だって、何だか嫌な予感が当たりそうな気がして…自分の腕の中にいる赤ちゃんをチラ見してみた。
ぱち!
「あうー」
チラ見したと同時に赤ちゃんが目を覚まし、何とも可愛い声を出しながら此方を見つめてくる。
それは、もう凄く綺麗な…
真っ赤な目で。
「あなた…やっぱり魔王?」
冷や汗をダラダラ流しながら、微笑む口元がつりそうになる。
そんなあたしに腕の中の赤ちゃんは
「…あい!」
と、返事をしてくれました。
まさか…ね。
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