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この短い道中で魔王は私の母性本能を上手くくすぐってくれていた。
私には無害に見えるこの子は、ここに入ってからも私の手を心なしかギュッと握っているのだ。
この世界の人達にとってみれば害悪でしかないし、中には自分の村や町を襲われ親兄弟と死別した人達もいるかもしれない。
その事を考えると簡単に封印しないでいてもいいですか?とは切り出せないでいる。
それに魔王も言っているが【今の僕】という言い方は、前の魔王とは別だと不器用ながらも私達に伝えてきているのかもしれない。
そう思うとやはり簡単には「はい、じゃ封印しまーす」とは言えなかった。
「…言いにくいんですが、神様から封印の仕方は教わっていないんです」
色々考えながらも自分なりに無難な言葉を選んだ。
「卵を触れる人間という事で呼ばれたので、運んで学園で封印のやり方なり教えてもらってから処置はするのかと思っていました」
この言葉に嘘はない。ちょっと魔王助けたいと思っている気持ちを隠しているだけだ。
そんな私を隣の魔王が見つめているのが分かった。
「僕はユウに封印されるのか?」
魔王のもらした一言にチラッと顔を向けると、大きな形のいい目を不思議そうに見開いていた。
違うよーーー!私はしたくないやい!
君ともう少し戯れていたいぐらいなのに。もし路頭に迷ってもお姉さんが養ってあげるよ。そんな勢いだよ。
表情は魔王に愛想笑いを浮かべたまま固まってしまった私に変わって、今まで黙っていた白虎が口を開いた。
「…いや、産まれてしまってからの魔王は封印はきかぬ、討伐するしかないのだ。討伐となれば勇者にしか出来ない。生まれたからには封印は出来ないからな…」
からな…の続きは「お前が踏み割ったから出来なくなったじゃねーか、責任取れよ」ですよね、分かります。
口を濁した白虎の代わりに心の中で代弁しておきましたよ。
「今って勇者は…?」
居ますか?という気持ちを込めて白虎をみつめる。直ぐにでも居るのは困るが、居ないのも困る…
「勇者の子孫はまだ初等部で、討伐する力はまだ無いのだ」
勇者の血を引き継ぐ者だけが魔王を討伐する事が出来るのだという。長い戦いの時もあり、その代の魔王に三代勇者が変わった事もあるという。その度に勇者の子らが成長するのを待たなくてはいけないらしく、その間は首都が中心となって魔王を撃退すべく奮闘するのだそうだ。
なので勇者が居なくても…魔王を倒す事が出来なくてもある程度は戦える。
以前の勇者は男1人女1人を残して老衰した。
子供を産むとその男系の子らに勇者の力が受け継がれるのだという。
その子供も大きくなり、嫁をめとりそして1人の子が産まれた。
先代魔王を封印した勇者の孫にあたるわけだ。
その子が今は初等部で勇者になるべく勉強中らしい。
「勇者のお子さんが高等部にあがる頃までは封印はもつはずだったんですがね…」
今まで黙っていた教頭が「いやー、困った困った」と飄々と言うものだから、そんなに大変そうじゃ無いように感じてしまう。
「長老は逝ってしまうし、卵を狙う空け者に出し抜かれるは、産まれてるはで…だいぶ予定が早まりましたね?」
「ね?」と言いながら白虎を見やる教頭は怒っているのか楽しんでいるのか…新参者の私には分からなかった。
だが、最後の産まれてるはの件は確実に私の所為なので土下座してもたりないぐらいです。
キョロキョロと目だけはせわしなく動いて人の表情や気持ちを汲み取ろうとするが、アル君以外の2人はイマイチ感情が読み取れない。
教頭からの言葉に白虎が少し考えるような素振りをし、重たげに口を開いた。
「色々と前倒しに事を起こさなくては行けなくなったな…」
その言葉をアル君、教頭が聞くと同時に、私でも分かるぐらいの緊張がこの部屋を満たしたのが分かった。
う…うわ〜、殺気だってませんか御二方?私と魔王を見る目が明らかに鋭くなった気がするんですが?
え、何これ死亡フラグですか?
そんな意識の混乱の中、普段話をする様な話し方で入ってきた言葉に誰もが耳を傾けた。
「…僕は別に今は世界をどうこうする気はない」
2人の視線から無意識ながらも魔王を背後に庇っていた私は、背後から聞こえてきた声に心底歓喜した。やっぱりこの子は悪い心持ってなかったんだ!
「僕はユウを食べたいだけだ」
満面笑みで魔王を見ようと顔を向けた私の顎を結構な力が入った片手で掴みながら魔王はそう言った。
あれ、死亡フラグ現在ですか?
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