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父、兄、俺2完結~腐二次創作弱虫ペダル福富、新開、福富父
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おう、寿一。
遅かったな。
新開君も一緒か。
話したのか。
話してしまったのならしょうがない。
電話で言った通り、おまえは徳一の代理としてロンドンへ行くんだ。
もともとおまえのことは、予備登録しておいたのだ。
呼ぶ必要が出るとは全く思っていなかったが。
向こうでは今ちょうど、巻島君が活躍中だ。
幸い彼はクライマーだし、おまえと競合はしないだろう。
すぐ荷づくりしろ、え?
いつだと?
今すぐと言ったろう!
おまえは徳ーの半分も実力が出せんうえに察しも悪いのか。
とっとと渡英して、福富の名を知らしめてこい。
何をしている!
何で荷づくりしてる。
行くのか?
あすの試合は。
そりゃあインターハイみたく大きな大会ではないが、一都四県高校選抜…
わかっているんだよな。
しょうがねえよな。
家庭の事情ってヤツだ。
少し早いが泉田に行かせよう。
新主将としての初仕事だ。
福富…泣いてるのか。
福富。
ケータイ鳴ってるぞ。
ケータイ…
「はい。福富の携帯です。
寿一はその、ちょっと…
はい?
マジですか?
え? 伝えろ?
それは親父さんから直接…
はい、はい、伝えます…
それじゃ…」
「言ってやろうか。
徳兄の負傷が思いのほか軽かったから、おまえはイギリスへ行かなくていい」
「…」
「つけたしがあったとすれば、コーナリング時の失速は直ったか?
くらいかな。図星だろ」
「寿一…」
寿一は荷ほどきを始めている。
いつものことだと言わんばかりの反応。
瞳からは表情が消えている。
何度これを見てきただろう。
家族という名の束縛。
親父さんにとってはいつだって、一番は徳兄さんで、寿一は二の次三の次で…
「コーナリング時の失速、直って四年経つのにな」
俺には何も言えなかった。
だから寿一はいつもうちに来て、晩ごはんもよくうちで食っていった…
「あすは泉田に仕切らせよう。
俺は泉田の指示を受ける。
あいつにはちょうどいい肩ならしだ」
そう言った寿一の目は、いつもの感じに戻ってる。
大丈夫。
大丈夫。
そう言いながら心は血だらけ。
そんなおまえを知っている。
だけどいまの俺は、やつを抱きしめてやれない。
それとも抱きしめていいのかな?
今日は特別…
両の手をさしのべかける。
でもやめる。
俺の思いは通じてるはず。
信じるしかない。
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