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金城おたおめトリプル②総北便り~R18腐二次創作弱虫ペダル金荒、田所
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休講になった。
「何か食ってく?」
ガリガリのくせに大食いの細目が何か言ってる。
答えようとしたらガラガラっとした声に割り込まれた。
「わりいな。きょうは金城、うちで使う」
「田所」
「あいかわらずダミ声だな」
笑いかける俺の横で、痩せ猫は妙に赤くなってる。
田所が笑う。
「バーカ。そーゆー使うじゃねえよ」
「バイトさせてくれるのか?」
思わず声が明るくなるが、田所の目がどよーんと澱んだのを見て、拒否られたことを理解した。
クロワッサンの遺恨はどれだけ続くのだろう…
「ま、とりあえず工場来いや」
甘い香りが満ちた工場のラインを抜けて、田所は俺と荒北~結局ついて来た~を事務所の応援室へ連れて来た。
旧式のビデオ機が、DVDプレイヤーやブルーレイプレイヤーと並んで置かれてる。
ピンときて席を立ちかける。
「いいからいいから」
と田所が、俺の両肩を押さえて俺をソファに半ばめり込ませる。
「おまえ、そのビデオかけろ」
「俺?」
スットンキョーな声を上げながらも荒北は、ビデオカセットを差し込む。
「昭和かよ」
キュルキュルキュルっとテープの緩みが手繰られる音がして、最初にパパン! とクラッカー音が出た。
「映ってないよこれ」
「赤いのついたで?」
「あれ? あっ。ここに写るんじゃないんだ」
小野田…鳴子…
のぞき込んだ影が下がると、今泉だ。
「赤いのついてなかったぞ」
「そらおまえが消したんや」
「そんなことするわけ…」
「もういいから! もっかいクラッカー鳴らそうよ」
パンパンパン!!!!
三人が散らした紙テープと紙吹雪で、画面は殆ど埋め尽くされている。
「お誕生日おめでとうございます!」
珍しく三人唱和している。
「あのっあのっ、これ虹マニュです。超レアなのにこないだニ体も出ちゃいましたので、一体金城さんに、あげます!」
「ネットで4000円なるで」
「鳴子くうんっ」
「こないだスカシに4秒差つけて快勝しましたわっ」
「その前に俺が四連勝してますっ」
「古賀さんっ。古賀さんもひとことっ」
ホイール持って通りかかる古賀を小野田が呼び止める。
「金城さん。愛してます」
小野田たちがどおっとズッコケる。
ほほえんだ古賀が再び画面を見つめる。
「手嶋も青八木も頑張ってます。イキのいいバカも入りました。今年も楽しみにしてて下さい」
「あとのみんなは…ええっ!? 田所さんもう出ちゃうの!?」
『あたりめえだ。遊びに行くんじゃねえぞ!』
田所のダミ声が、画面の外から細く聞こえる。
「もう行くぞ」
野太い腕がカメラの前を横切ったかと思うと、画面はいきなり波線だけになった。
「これで全部か」
「全部だ」
動じない目で田所が言う。
そして徐にそれを取り出した。
「そしてこれが、やつらの心意気だ」
小さな包みを受け取る俺の手が震えている。
包装紙。
ロゴ。
レリックの…904(キューマルヨン)!
世界最高の競技用グラス!
「度も合ってる筈だ」
「あいつら…」
目頭が熱くなったが、傍らで荒北がえぐっ、えぐっとハナをすすっているので泣けなくなった。
荒北は大泣きだった。
「『明早に負けないでください』ってか?」
ベッドに仰向けに横たわり、足組んで、カードをヒラヒラさせている。
「『明早に』じゃない。どこにも、だ」
「どこにもって…一京には負けんダロ!」
熱く叫ぶ荒北を見る。
「どこにもだ」
レリックをかけ、外し、徐にケースにしまう。
「来い」
今日いちばんの頬紅で、荒北が噛みついてくる。
「何で俺がおまえ祝うと思ってンのっ」
「祝いたいだろ?」
ふっと笑む。
「クソクラエ!」
いちばん悪い口吐いて、荒北靖友が俺の膝に今、胸合わせで乗ってきた…
金城さんお誕生日おめでとうございます。
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