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「行くの?」
冬夜に引きとめられた。
「理央が…どうなろうとも、俺があいつを守ればいい話だろ?」
「あ!おい、浩志…!」
理央が危ない目に会うのなら、いや、合わせない。
冬夜の制止の声を振り切り生徒会室を出た。
学校中探した。
屋上も空き部屋もどこにもいなかった。
教室に戻ったのか、そう思い理央のクラスに向かうと教室の後ろから1人の生徒が慌ただしく出て行った。
井下だった。教室を覗くも理央の姿はなかった。
井下の向かった先は理央の所だ、そう思い自分も井下後を追った。
「ううっ…翔…っ…」
追った先にいたのはやっぱり井下と理央だった。井下が理央を優しく抱きしめ理央は縋り付くように井下の胸で泣いていた。その様子を見て俺の心臓はグッと締め付けられる様だった。
俺が悪いんだ、分かっていても理央が井下に抱きついている事が悔しくて堪らなかった。
理央と話がしたい。そう思い声をかければ理央はビクッと震え俺の方を見た。会いたくない見たくないという目をされ心が痛む。でもそれ以上に理央の事を俺は傷つけてしまったんだ。理央がこちらを見たのもほんの少しですぐに井下が理央と俺の顔を合わせない様に抱きしめた。
話さなきゃいけない。
話したらどうなるのか、理央はどう思ってくれるのか、納得してくれるのか。井下の言う通り言い訳になってしまうかもしれない。それでも俺は理央に伝えなきゃいけないと思った。俺の自己満足、俺自身の為、それでも言うべきだ。話さなければ二度と理央は俺を見てくれない、そんな不安さえ生まれた。
「理央に本当の事を話したい」
井下は俺を睨むと理央に保健室に行くよう告げた。理央は不安げに俺と井下を見た後走り去って行った。
「俺が話したいのは理央なんだけど」
「今のお前に理央と話す権利あんの?」
雨は止む事を知らない。
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