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感情の混沌
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名前を呼ばれた。他の誰でもない、俺の。
咄嗟に俺は身を強張らせてしまった。その声に反応したのは俺だけじゃなかった。浩志も振り返りそこにいた人物に目を向けた。
そこに立っていたのは凄く凄く会いたくて堪らなかった人_____
そして、凄く凄く
______会いたくない人。
「理央だよな?…あぶね、違う人だったらどうしようかと思ったわ」
「……琳、どうしてっ…!」
「びっくりした?」
「いや、え…てかっ…」
「今学校の帰りなのか?……わり、友達と一緒だった?」
友達…ではないけど、どう返していいかわからなくて黙ってしまった。
琳。
今俺と浩志の前にいるのは桐島琳、その人だった。
俺がしばらく黙っていると琳はチラッと浩志を見た後俺の両肩に手をかけて目線を合わせる様に屈んできた。
「わりぃな…。ここに来たらお前に会えると思ってたから……まさか来ていきなり見つけられるとは俺も思わなかったわ」
「あ……え、…うん」
「理央、お前何も変わってないな」
そう言い肩に乗せていた手が頬に移動してビクッと俺は身体を震わせてしまった。
変わってない。
それはお前もだよ、って言いたかった。すらっとした身体も目鼻立ちの整った顔も落ち着いた話し方も深く海の底の様な青みがかかった黒髪も、…そして何より何事にも揺るがない黒い黒いその瞳が。
「会いたかった、本当に」
「えっ、琳!」
俺は琳の腕の中にいた。いつの間にか抱き締められていたのだ。咄嗟の事に判断が遅くなったが浩志がいる事に気付いて思わず琳を突き飛ばしてしまった。
「わ、わりぃ…うわ、っこ、浩志?!」
俺が琳から離れた途端に浩志が俺を引き寄せた。
「理央の…知り合い?」
「んー……まあ、そうなるかな。知り合いって言うよりかは、悪友?」
はは、と笑いながら浩志の問いに答える琳。浩志は黙って琳を見つめている。その間にも俺の腕を強く握っていた。
琳はまた口を開く。
琳の口から出てくる言葉。それを俺は聞いてはいけないような気がした。
「悪友は悪友だけどね…今はもうそんなんじゃねぇよ…。俺が何でここに来たか。……理央を探しにきたんだ……理央を俺のものにする為」
ここにこれ以上いれない気がした。バチッと弾かれた様に俺は浩志の腕を払いのけると走ってその場を離れた。
ぐるぐると色んな感情に押し潰されて今にも吐きそうだった。
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