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焦りと怒りと
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理央は俺の腕を振り払うと走って行ってしまった。俺は追いかけることもできずにそこに立ち尽くしてしまった。
「あー、行っちゃった…」
そう言いながら理央が走って行った方を見つめるこの男。
「誰だよお前」
「さっきも言ったじゃん、悪友って。……あ、名前?桐島琳、よろしく」
手を差し伸べてきたが俺はそれに答えず名前だけを言った。
「なんだよー、そんな怖い顔すんなって……。神戸君と理央はあれだろ?両思いなんだろ?見てて分かるし」
「………」
「そっかー…あいつ元気でやってんだな。それだけで俺は安心だわ。でも、元気って分かったらそれはそれで足りないんだよなー」
「どういうことだよ」
ポケットに腕を突っ込みながら俺の近くに来て顔を俺の耳元に寄せる。
「だからさっきも言っただろ?理央を俺のものにするって。……俺も理央が好きなの」
ポンッと肩に手を起き理央が走って行った方とは反対の方向へ歩き出した桐島。
俺は桐島の腕を掴み引きとめようとしたが奴は振り向き、
「話し合いも殴り合いも今はするつもりはねぇよ……これ俺の」
そう言い腕を剥がされ代わりに手のひらに握らされたのは一枚の紙切れだった。
開くとそこには桐島の携帯番号であろう数字が書かれていた。端っこには理央の名前が書き記されていた。本当は理央に渡すつもりだったのだろう。
俺はそれをクシャクシャに握りしめそのままズボンのポケットに入れた。
桐島が見えなくなるまでずっとその場に立っていた。
行き場のない怒りと焦燥しか俺の中にはなかった。
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