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翔が出て行った後、何と無く気まずくなってしまった。
こんな話をした後だった。浩志の反応が怖くない訳ではなかった。
話した後に後悔しても遅い、でも話さなかったらもっと後悔する。浩志には正直に話したかった。
「えっと…うん…そういう事だわ」
「あぁ」
目を合わせる事なく会話する。
浩志も大切な人だ。もし、また…
「おい」
「…え?」
ベッドに仰向けでそんな事を考えていたら急に目の前に浩志の顔が現れた。
「またお前余計な事考えてんじゃないだろうな?」
「………」
「お前がどう思ってようが俺はお前のそばを離れるつもりはない」
「……おう」
真っ直ぐなその瞳に嘘偽りは感じなくて浩志の気持ちが物凄く伝わってきた。
あぁ、本当に俺はこの人に愛されてるな、ってそう思えた。
「そういえば、これ」
「ん?」
浩志が何やら取り出したのは小さいくしゃくしゃになった紙切れだった。
「桐島から渡された」
「…番号か」
「俺に、って言ってたけど…まあ理央に渡すつもりだったんだろうな」
「なんでまた、これを俺に」
「桐島が渡したかったのはお前にだからだ。俺が持ってても仕方ない」
ほら、と手に握らされた。
「桐島のお前への気持ち分かってんだろ?」
それに関しては俺は認めたくなかった。琳が嫌いとか言うつもりはないしむしろ好きだ。でもその好きを恋愛感情にしてはいけないような気がした。そんな感情を向けられたら俺はどうしたらいい。俺の琳に対する純粋な憧れの気持ちを自分自身で裏切ってしまう。
当時きっと俺はそこの境界ぎりぎりで琳を意識していたんだと思う。そんな中であんな事があったんだ。俺の琳への気持ちは蓋をしたつもりだった。
それがいざ会ってしまった時、かすかに気持ちが残っていた事に自分で気付いてしまった。でもそれは今となっては、ただただ尊敬と憧れの気持ちだけだった。琳がああ言った時………俺を求めてると知った時、俺が揺らぐというよりも、琳を裏切ってしまうんじゃないかと怖くなって逃げ出してしまった。それが昨日の事だった。
当時琳が俺をどう思っていたかは知らないけど、今は俺は素直に琳の気持ちに応えてやる事ができない。
純粋に琳の事は好きだ。でも何故今になって俺の所に来たのか、そもそも何故俺なのか、それも含めて琳とは話す必要があると思った。
「ちゃんと…話すよ、琳と」
「おう……じゃ、それも渡したし。帰るわ」
「え…」
「何?」
にたりと笑って俺を見下ろす浩志。
「何?もっと一緒にいたかった?」
わざとらしく聞いてくる浩志に意地の悪さを感じる。
違う!
………と、言えば嘘になる。
けど、この口は素直じゃなくて、
「や、別に……じゃあな」
「はー……」
「な、んだよ…」
「お前はなんで素直に甘えらんないわけ?」
酒入った時くらいじゃねぇか…と、なんかよく分からない事を言っている。つーか、素直に甘えるとかなんだよ!!できるわけねぇだろ!カッと熱くなった顔を浩志からそらせば、くいっと顎を掴まれそのまま口を重ねられた。
「ふ、…んぅ?!」
離れる瞬間にペロッと舌で唇を舐められる。
「お前が今どんな気持ちかは知らないし聞くつもりもないけど………俺はお前が好きだから」
くしゃりと頭をひと撫でしてじゃーな、と部屋を出て行ってしまった。
浩志が出て行った扉を見つめながら手の中にある紙をぎゅっと握った。
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