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悪臭と潔癖
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扉を開けた瞬間、淫靡な臭いが鼻を突いた。微かに鉄臭い臭いも混じっている。そして汗の臭い。それらの臭いが入り混じった狭い部屋には一組の兄弟がいた。兄は床に俯せに倒れこみ、意識を失っている。彼の股間は精液に塗れ、また尻の間からは血が滴っていた。弟は兄の傍らに胡坐を掻き、人形のように動かない彼をじっと見つめている。わざと靴音を鳴らして歩み寄ると、彼は顔だけで振り返り、雰囲気で侵入者を威嚇した。
「……」
「あれから随分と時間は経ったが、まだ続けるつもりか?そのまま放置するなら、せめて中だけは洗ってやれ」
高崎は上体を屈めてタクミに触れようと手を伸ばすが、その手は強い力でマコトに掴まれる。見ると彼の手にも体液が纏わりついていて、高崎の袖口に新たな染みを作った。
「汚いな」
元来潔癖の気がある高崎はマコトの手首を握り、掴んでいた指を一本ずつはがすと、低い声で忠告する。
「お前がタクミをどう扱おうが俺には関係ない。好きにすればいい。だがな、このまま続けるようならば、近いうちにタクミは死ぬぞ」
「……」
「兄貴の為を思うなら早く解放してやれ。お前もタクミが死ぬ姿を見たくはないだろう?」
「……タクミが死ぬ…?」
「ああ、簡単にな」
マコトは高崎の言葉を聞いても動じなかった。いや、動けなかったのだ。僅かに開いた口からは何度も兄を呼ぶ声が聞こえる。高崎の言葉にどう触発されたのかは分からない。だが、もう自分がここにいる必要はないだろうと考え、高崎はそっと部屋を後にした。
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