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簡単にしろ
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「わぁー、いい匂い」
丁度出来上がった料理をテーブルに並べ始めた所で、ドキンちゃんが部屋から出てきた。
途端にホラーマンが上機嫌になる。
「出来立てですよ〜、どうぞ召し上がってくださいホラ〜」
「わーい、いただきまーす」
「いただきまーす」
ドキンちゃんに続いて俺様も料理に手をつける。
ホラーマンが作ったのは卵や肉や野菜がたくさん入ったサンドイッチで、パンがトーストしてあるのがまた良い。
一緒に出されたコーンスープに合う。
まさかコイツがこんなに料理が上手かったとは、今度からドキンちゃんがご飯を作ってくれない時はコイツを呼ぶか。
「おいしー!ホラーマン、これ何か隠し味とか入ってるの?」
「そのコーンスープには、ワタシのドキンちゃんへの愛情がたくさん入ってるんですね〜、ええ」
「はいはい」
「手厳しいですね〜」
悲しいです〜、とか言っているけれど顔は心底嬉しそうだ。
ドキンちゃんに美味しいって言って貰えたからだろう。
俺様は誰かに料理を作った事がないから分からないけれど、多分自分の作ったものを美味しいって言われたら嬉しいんだろうな。
「ごちそーさまでした!」
「ごちそうさま、美味しかったわね」
「まさか、ばいきんまんがあんなにおかわりするとは思っていなかったんですね〜、ホラ〜」
俺様だってまさか3回目のおかわりで、もうない、と言われるとは思っていなかった。
ドキンちゃんはいつも用意してくれてるし。
美味しいものはたくさん食べたいだろ。
「そういう事だから、夕飯は多めに作ってね」
「夕飯もワタシが作るんですか!?」
「だってホラーマンの作ったご飯とっても美味しいんだもーん、おねがーい」
「し、仕方ないですね〜」
と言って、でれでれしながら皿を片づけ始めるホラーマン。
いやチョロすぎるだろ、お前いいのかそれで。
向かいに座っているドキンちゃんは、イタズラが上手くいった子供みたいに笑っている。
まあ、なんだかんだ手伝うんだろうな、優しいから。
あ、そうだ、俺様ドキンちゃんに聞こうと思ってた事があったんだった。
「そういえばドキンちゃん、城に着いた時悲しそうな顔してたけど何かあったのか?」
俺様がそう聞くと、ドキンちゃんは困り顔で笑ってみせるという器用な事をした。
「やっぱり顔に出てた?」
「うん、少し」
そうすると、ドキンちゃんは「そっか」と小さく呟いて手元に視線を落としてから、また俺様と目を合わせた。
どうしたのかと小首を傾げると、凄く辛そうな笑顔で告げた。
「食パンマン様にね、フラれちゃった」
ドキンちゃんがそう言うと、会話が聞こえる位置で食器を片付けていたホラーマンが手をとめて詰め寄ってきた。
「それは本当ですかドキンちゃん」
「嘘ついてどうするのよ」
「許せませんねぇ許せませんねぇ、ドキンちゃんからの好意を無下にするなんて、何を考えているんですかねぇ」
そう言っているホラーマンは今まで俺様たちに見せた事がないような表情をしていた。
口は笑ってはいるけれど、目だけは底冷えしていてここにある物は写していないようだった。
「しょうがないでしょ。食パンマン様、好きな人が居るんだって」
でもそれは、ドキンちゃんのこの一言で途端にいつもの様な表情に変わった。
「そうですか、なら、仕方ないですね〜」
何だ、やっぱり食パンマンはカレーパンマンが好きだったのか。
そりゃそうだよな、好きじゃなきゃあんな事しないもんな。
なんて、分かったような事を考えるけれど、俺様には好きだなんだとかそういう事はよく分からない。
しょうがないだろ、誰かを好きになった事なんてないんだから。
ホラーマンみたいに好きな人が想い人にフラれた事に怒れるとか、ドキンちゃんみたいに好きな人にフラれて傷ついたりだとか、食パンマンやカレーパンマンみたいに、傍から見たら本当に好きなのか分からなかったりだとか。
こういう好きは、俺様がホラーマンやドキンちゃんやカビルンルンたちへ抱いている好きとはまた違うのか。
『好き』には色んなものがあって、俺様にはよく分からない。
難しいんだ。
もっと簡単にしろ。
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